きらめき 綴り

療育アドバイザーとして活動しています。日々の心の煌めきを大切にしています。

きらめき療育論:子どもの癇癪。内言語の獲得方法と、それを他者に伝える手段、絵カード・気持ちの段階を表すイエローカード・レッドカードを使えるようになるには。)

さっきまで静かに座っていたと思ったのに。

さっきまで笑って楽しそうと思っていたのに。

次の瞬間、急に地団駄踏んで怒り出す。

「え〜?なになに?なんで怒ってんの?」

「なにか嫌なことあった?なにか欲しいものあるの?」

「どうしてほしいの?ほら、教えてよ」

いくら聞いても分かりません。

こんな経験ってないですか?

え?日常茶飯事?なすすべがない?

それは大変。

大人も大変なら、当人の子どもはもっと大変。憤りの渦に巻き込まれて大混乱、もがいて苦しい思いをしているのですから。

 

 

激しく怒って泣いて、周りの物を投げたり、人に当ったり、そんな様を癇癪を起こすといいます。

が、そもそも癇癪はどうして起こるのでしょうね?

 

・過敏

・こだわりが強い

・言葉で自分の気持ちを伝えることが苦手、またはできない

・衝動性が高い(怒りの沸点が低い)

これらの特徴があるとき、癇癪は起きやすいと考えられます。

 

たまに大人でも、ガァーっと癇癪を起こしている方、見かけますけれども。あれはストレスが溜まってイライラしていたり、お酒の飲み過ぎで感情抑制が効かなくなっていたり、瞬間湯沸かし器みたいに、すぐに怒りの頂点が来てしまう沸点の低い人、衝動性の高い人だったりします。

意外と子どもたちも、衝動性の高さという点で、共通するところがあるなぁなんて思うのですが、大きく違う点は、まだ「未発達」というところでしょうか。成長の途中ということなのですが、どういうことかというと?

私たちは、何か欲しいものがあったら、

「〇〇がほしい」と言えます、よね?

探しものがあれば

「〇〇がないんだけど、どこか知らない?」と聞けますね?

分からないことがあれば

「教えて下さい」

ってお願いできますよね?

疲れて限界に達したら

「もう無理、限界。休ませて」

ってSOSを出せるはずです。きっと。

 

癇癪を起こす子ども達は、まず、今挙げた様な自分の状態を言葉に変えて感じることがまだ出来ていません

ほしいな、無くて困ってる、分からないよ、しんどいよ、つかれたよ、あついよ、さむいよ、おなかすいたよ、イライラするよ、かなしい、つらい、気分が悪い、、、。

こんな風に、感情を表現する言葉はたくさんあるのに、癇癪を起こす子どもたちは、まだ自分の中に起きている感情が、どの言葉に当てはまるのか分からずにいます。しかも過敏性を持っていたり、こだわりが強いと、更にその苦痛は増してしまいます。

 

一番大切なのは、まずはいつも癇癪を起こすパターンを見つけ、要因となるものを避けておくといった環境調整で、癇癪を起こす前に、起こし始めたらすぐに、解消に向けて働きかけてあげると、癇癪まで起こさずに回避することができ、子どもも大人も負担が軽くなります。

 

しかしそもそも、どんな時に、何をきっかけで癇癪を起こすのか傾向が分からなければ、環境調整もできません。

分かったとしても、回避するだけでなく、子ども本人の力で解消する力を身に付けて癇癪を起こさなくても済むようにしてあげたいというような時には、手立てが必要です。

落ち着くまで静かな場所に行き、クールダウンさせてあげるのは勿論有効ですが、訴えたいことを訴えられるようにしてあげなくては、それは根本的な方法とは言えません。

そこで今回は順番に、

・癇癪を起こさなくなるために必要な手立てと、その使い方。

・子どものタイプ別による、他者への気持ちの伝え方・コミュニケーションツールの使い方

について書いていきたいと思います。

 

 

自分の中で起きている感情や状況を声や文字に変えずに心の中で言葉を使って捉えたり思考したりするときに使う心の中の言葉を内言語といいます。

 

この内言語は、2、3歳頃から、私達が使う言葉を聞いて、徐々にその内面で言葉を使って思考し、獲得しだすと言われています。

しかし、癇癪を起こす子ども達は、何らかの理由で、まだこの内言語を獲得できていないことが多いのです。

内言語として、自分の気持ち言葉マッチしていないので、湧き上がってくる気持ちを外に表現する方法がなく、苦しくなってやむを得ず、癇癪を起こすという方法で外に出していると考えられています。

ただ、癇癪という形で外に出して表現してみたものの、それをすぐさまキャッチしてかゆい所に手が届くように理解してくれる人はなかなかいない為、子ども達の気持ちは、

こんなに表しているのに、なんで分かってくれないんだ!!!

と、更に激化して、より強い癇癪となって表されてしまうことになっているのでしょう。

 

もし、私たちが、言葉を使ってはいけないよ、というルールで過ごしたら、どうなるでしょうか。内言語は獲得しているので、自分の中で起きている感情などは分かっていますが、それを表すことが出来ないので、

「う〜!う〜!、う〜〜!!」と言って、身振り手振りし、それでも伝わらなかったら次第に腹が立って、やっぱり地団駄踏んじゃうんじゃないでしょうか。

聴き取ってあげる方の責任の重大さよ。

何とか分かってあげようと、

「え?なに?お腹すいた?違う?じゃあ何よ!なんか欲しいの?どこか痛い?」なんて、一緒になって段々エキサイト。

余計に相手を興奮させてしまうってことになります。

 

こうやって、子ども達も、伝えたいのに伝えられない、伝わらない絶望感の様なものを抱え、怒りのMaxの様な段階にいるのでしょう。それが、ちょっとした刺激で出てしまうようになり、それが自分の表現の通常運転となって覚えて定着しまっているのだろうと思います。

 

では、どうしてあげたらいいのか?ですが、これは、一足飛びにはいかないのですが、必ず行ってあげて欲しいのが、

 

『子どもたちの内言語を養う』

 

です。

内言語を養うには、

まず感情と言葉のマッチングを行うことが必要です。

子どもの内面で起こっていることを推測し、子どもが癇癪を起こしだした時、

「あなたは今、怒ってるんだよねぇ?腹が立っているんだね」

などと、今起きている気持ちをこちらから代弁し、聞かせてあげることで、

「あ、今僕は(私は)怒っているんだ、腹を立てているんだ」

と気づくことができるようになるのです。

 

ただ、怒ると一口に言っても、色々で、

「怒りすぎていて悲しい

「怒りすぎていて悔しい

など、人の感情というものは複雑に出来ていますので、繊細な部分も丁寧に読み取り言葉がけをしてあげないと、

「違う!」

ということになって、更に癇癪が酷くなるということに繋がります。

 

どうすれば、気持ちを分かってあげられるのか?については、お母さんや周りにいる人が行動をよく見ておく(観察)が大切になります。

特に、目の動き 表情 手 足 などの些細な動きを普段から見る様に心がけておくことと、前後の出来事の繋がりを振り返る癖をつけることです。

次第に、

「あ、今、〇〇が嫌だったな」ということに気づける様になります。

 

子どもが癇癪を起こしだしたら、スッと傍に寄り、落ち着いたらトーンで、しかしはっきり聞こえる程度の声で、

①「今、〇〇が嫌で怒ってるのかな?、怒ってるんだよね?」

と伝え、

②「じゃあ、怒ってる!って言えばいいんだよ」と優しく諭します。

きっとすぐには言えないと思いますが、

③「分かったよ、怒ってるんだね、そっかそっか、分かったよ大丈夫だよ」と笑顔でしっかり受け止めます。

これを普段から繰り返すことで徐々に内言語が育っていきます。

癇癪を起こしているときは、難易度が高くなりますから、この気持ちと言葉のマッチングは、是非普段から、行ってあげて欲しいと思います。

 

発達がゆっくり、若しくは重度の障がいを持っていて、まだ発語のない場合でも、お腹が空いてご飯が欲しそうなら、

「お腹が空いたんだね」とお腹をさすって、空いたというジェスチャーをしたのち、

「ごはん、ちょうだい、だね」

と言って、同時に両手の平を重ねてちょうだいのジェスチャーをして、言葉と要求のジェスチャーもマッチングして教えていってあげると、早道です。

言葉を未獲得の子どもには、マカトンというジェスチャーがありますので、そちらを勉強されて使われると良いと思います。

癇癪を起こすお子さんで、より大変なのはこの発達がゆっくり、若しくは重度の障がいを持った子どもたちです。

ジェスチャーやマカトンを使ってどのようにコミュニケーションが可能な状態に持っていってあげるか?は、とても大切なので、是非この先もお読みいただいて、お子さんに実践していただきたいと思います。

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