と、誰もが1度は考えたのではないだろうか?
1981年。当時私は10歳。小学生だった。
切なくイントロが流れ、甘く優しい声が
「もしも、ピアノがひけたなら、思いの全てを歌にして、きみに伝える、ことだろう」
と囁く。
私も、ピアノがひけたらな、、、。
そんな素敵なことはないだろう。
子ども心に何度もそう考えた。
西田敏行さんが歌うこの歌は、当時の人気ドラマ「池中玄太80キロ」の主題歌だった。
戦後36年。高度成長期も終わり、バブル期までの谷間。
まだまだ貧しくも清らかに生きるといったことが人々の心の支えでもあった頃だったように思う。
ドラマには、そんな人々が、逆境にいても心だけは貧しくならないぞと、勇気つけられるようなストーリーが多かった。
池中玄太80キロにしても、サンキュー先生にしても、主人公は少し3枚目キャラだけれど、何より心が熱く美しい。
それは西田敏行さんが、ご自身の身を持って体現されていて、ピッタリのハマり役だった。
愛嬌のある体型と温かみのある声、そして何より目が澄んでいた。
私はその頃、家庭不和で複雑な状況にいて、その3年後には父と別居している。
西田さん演じる誠実な役柄は、その頃の私にとても魅力的に映ったに違いない。
美形も好きで、ちびまる子ちゃんの様に、秀樹やジュリーやマッチやと、憧れる芸能人は沢山いたけれど、その中で、西田敏行さんだけが、小学生の頃の私の理想の男性だった。
その西田さんが歌う、この「もしもピアノが弾けたなら」は、年月が経ち、大人になってからも時々思い出しては聴いていた。
いつ、聴いても、心が締めつけられキュンとする。
歌いながら、時々鼻をクシャっとさせる。
いたずらっ子みたいにウインクする。
その瞬間、西田敏行さんは輝いて見えた。
素敵な方だった。