きらめき 綴り

療育アドバイザーとして活動しています。日々の心の煌めきを大切にしています。

今はエネルギー、チャージ時。

日曜日。

雨かもしれないと数日前の天気予報では言っていたらしいけど、当日にはちょうど正午から2時間ほどが晴れ予報になっていた。

この日は月に1度の、私が個人的に持つ会の日だった。

いつもは会館を借りて学習やらルールのある遊びやら運動やらをして、保護者同士の情報交換や私への相談を受け付けたりして過ごすのだが、今回は春だし、外に出て、近場へ遠足に行くことにしていた。

遠足といっても、近くの山の裾にある大きな公園に遊びに出かけるだけだが、今回はそれだけでも十分意味がある企画なのだった。

 

なぜなら、先月小学校を卒業した、ぐりとぐらの様に可愛いお二人が、この4月に中学校に入学され、親子共々、肉体的にも精神的にもちょうど疲労がピークで、不安や期待の入り混じった複雑な胸中にある頃と予想されるから。

小1からの付き合いの親子同士会うことで、不安や喜びを分かち合い、心身共に軽くなってまたこれから続く中学生活を送ってもらいたい、という意味を込め、外でパァッと元気に体を動かして発散しましょう!という意味だ。

 

地域の中学校、支援学校の中等部、それぞれに長所、短所があり、慣れない内は悶々とすることが多い。

ましてや地域の中学校ともなれば、私も経験しているが、小学校の手厚さと違い、急に親子揃って大海原の大波に放り投げられた様な状態になる。

中学の先生は教科担任制で、横の繋がりが薄い。支援担が一人のこどもの様子を把握するには、それぞれの教科を担当する先生それぞれから情報を吸い上げなければ全体像は見えてこない。しかも支援担にも担当教科があり、随時側についていることなどなかなか出来ないし、小学校の様に何から何まできめ細やかに対応するといったことは少ないからだ。

障がいを持った生徒数も中学校になれば少なくなり、その為接した経験が少ない先生がいても仕方がない、というのが実情だ。

だからトラブルが起こったら、特に対応が期待よりも遥かに悪いことに、がっかりしてしまう。

 

どうやら、入学早々その予感は的中し、友達とトラブルになってしまったそうだ。

支援担に連絡しても、要領を得ない。

小学校から情報は共有されていると言っても、それは書類上だけのこと。年度初めは先生方も、バタバタしていて目を通す時間もなかなか取れない。ましてや、どんな支援が必要かなど、考えることも難しいだろう。

大事な提出物も自分では出せないとか、持ち帰る物を忘れる、なんてことの対応も急務だけれど、友達とのトラブルについては人権教育も兼ねてしっかり腰を据えて取り組んでもらわなくては、あっという間にいじめの問題に発展してしまう。

幾らお母さんがせっついても、なかなか上手く噛み合わない時、まずは支援担がどれくらいの障がいを持った生徒を今まで受け持った経験がお有りか、伺うと良いですよ、とアドバイスした。

障がい特性を知らなければ、起こりうる場面を想定し、動くことなどできないからだ。

まずは根っこのところから理解してもらえるよう話すことが大切だ。

 

中学校は支援学校にした方が安心だよと以前から進言していたもう一方のお母さんは、心の内を話すそのお母さんの話に、心から寄り添い頷き聞き役に徹しておられた。

 

大人たちの深刻な相談をよそに、こどもたちは遊具で楽しそうに遊んでいる。その傍らには夫が見守り役をしてくれている。

こどもたちは夫のことが大好きだ。こどもは優しい人を見抜く力を持っている。

朝バイトをこなした後なのに、お疲れ様、と心から感謝だ。

 

さあ、せっかく来たのだから、バトミントン、大縄、縄跳び、ボール遊びの特訓もするよ(笑)

バドミントンは時々チャレンジするけれど難関。

縄跳びは2人とも連続で跳ぶことはまだ出来ていない。一回一回止まるけれど、ずいぶん次に縄を回すのが速くなって動きが繋がってきたよ。

ボールは中当てに挑戦だ。お母さんたちも中に入って協力してもらう。当たれば外野になり、当てることが出来たらまた中に入る。当たらない内は外に出たらいけないよ。このルールが自閉症のお子さんたちにはなかなか入りずらい。から、逆に面白い。いかに本人たちに分かるように説明し、行動を通して刷り込んでいくかは腕の見せどころだからね。こういう遊びも経験をどれだけ積むかで段々形になっていく。療育施設でも散々やって来たからこそ、今、こうやって少ない介助で参加することが出来ているのだ。

 

大縄の特訓をしていると、どこからともなく見知らぬ男の子がやって来た。満面の笑顔だ。

「どうぞどうぞ、お兄ちゃんが先に跳ぶから、次にお入り」

と声をかけると嬉しそうに私の横に来た。

小学校1年生くらいだろうか。

勿論、決して上手いわけではなくて、3回チャレンジして、3回とも3回で引っかかってしまう。ジャンプのリズムが速いのだ。私はこどものジャンプに合わせて縄を回し足元を潜らせるのが得意だが、それでも3回を越せない。

中学生たちも跳ぶが、こちらもどっこいどっこい。

その男の子には、トン、トン、トンと、リズムを伝えた。

「このテンポで跳んでごらん」

トン、トン、トン、トン、ト、、、

ほら!5回には届かなかったけど、4回跳べたね!

一発OK♪ハイタッチ!

男の子は大喜びしてまたどこかへと走り去っていった。

こんな風に、楽しく遊んでいると地域のこどもたちが乱入してくることも良くあることだ。

私の会のこどもたちも、順番を取られて怒ったりもしない。

障がいの有る、無し。うちの子、よその子。知ってる、知らない。関係なし。

みんな同じこどもたち。分け目なしに接していると、こどもたちも分け目のないこどもたちに育ってゆく。

そんなこんなで、初めはお弁当を食べ、1時間ほど遊んだら終わる予定だったのに、気づけば17時で、6時間も経っていた。

よっぽど、楽しかったのだろう。

この会では、ママたちもなんの気遣いもいらない。

こども達は、発達度合いの近い友達と、なんの緊張も感じず無理もせず、遊ぶことができる。

というか、元々他者に関心のなかった2人なのに、手を繋いで連れ立って遊んでいる。成長したなぁ。

帰り道、みんな、心晴れ晴れ。和気あいあい、明るい声が響きあっていた。

 

このタイミングで、この遠足に行くことができて良かったな、と心底嬉しく思った。

きっとまた明日から、皆さん歩き出すことができるだろう。

 

G.Wよりも前の今が、エネルギーのチャージ時かもしれない。そうしなければ、きっとG.Wで、枯渇して再出発が難しくなるだろうから。

 

そうそう。行きしに私のメンターの1人でもある12年の付き合いのこどもさんに街角でバッタリ出逢った。1年ぶりだろうか。この会を卒業したおこさんだった。ヘルパーさんと朝イチから出かけてたんだね。

みんな嬉しくって大喜びで、せっかくだから写真をパチリと撮らせてもらった。

笑うっていいよね。

嬉しいって心が沸き立つ。

なにかが胸いっぱいに膨らんでいくのが分かる。

 

さあ、またみんな、心にエネルギーをチャージして出発だ!