きらめき 綴り

療育アドバイザーとして活動しています。日々の心の煌めきを大切にしています。

キチキチバッタ。

こんな暑い季節には、ひんやり冷たい川に足をつけて、ひととき街の喧騒を忘れ、ほぉ〜っと過ごし癒されたいものです。

この週末、私たちはお気に入りの道の駅へ行き、安くて美味しいお野菜や、その日のお弁当を買い、知る人ぞ知る穴場へと出かけました。

そこは自然豊かで穏やかな芝生の広場。小川が流れ、子どもたちのキャッキャとした声が聞こえる平和な場所です。

広々として、とても良い所なのに、人でごった返していないのは、駐車場がさほど大きくないからかもしれません。車が入れなければ、諦めて他所に行くしかありませんからね。そうしてここののどけさは保たれているんだなぁなどと考えてみたり。

そうこうするうち、私たちの車は丁度出る車とタイミングが合い、なんとか停めることが出来ました。

 

レジャーシートと荷物を持って、いつもの木の下で休みます。

他の家族連れはみんな小川の辺りでテントを張り、川遊びに興じていて、木の下の私たちの周りには誰もいません。これ幸いと足を伸ばして寛ぎます。

ここに来ると、いつもレジャーシートに寝転がり、足元のミクロの世界で遊ぶことができます。小さな小さなクローバー。忙しなく動く小さな小さな虫たち。その小さな身体で逞しく生きていることが不思議で仕方ないのです。

子どもの頃に親しんでいたこのミクロの世界を、歳を重ねた今、忘れてしまわないように、こうして定期的に触れ合うことができることの大切さを、ひしひしと感じます。

この日のお弁当は、お稲荷さんが4つとたい焼き。お稲荷さんは一つだけが揚げのお稲荷さんで、他の3つは蒟蒻のお稲荷さんです。ヘルシーでぺろりと食べられてしまいました。その上たい焼きまで食べてお腹いっぱい胸いっぱいで、幸せに浸っている時でした。

夫が「それ何?」と聞くのです。

指差す方を見るとレジャーシートとそれを入れていたビニール袋の隙間で細い物がウネウネしています。

黄緑色で、細長くて尖っているその形。一瞬芋虫?と思いましたが、いえ、違います。この形状、よく知っています。

そう。ショウリョウバッタです。ショウリョウバッタが逆さまになり、お尻が上になっていたので何か分からなかったのでした。

これはショウリョウバッタだよ。と夫に伝えましたが、今一つピンと来ない様子。

「キチキチバッタともいうけどね。」

と追加情報を出しましたが、それでも知らないようです。

そっか、知らないか。

と言って

きちきちばった〜、きちばった〜。と歌いかけました。が、次の歌詞が出てきません。

Youtubeで探すと少ないけれど、1つ2つは動画が出てきたので夫に聞かせてみました。

 

きちきちばった、きちばった。

ふんばりばった、とびばった。

あおぞらめがけて とんでった。

草の実 草の穂 越えてった〜。

きらきらきれいな はねだった〜。

 

これ、サトウハチローさんと平原武蔵さんという方が歌詞を書いた曲だったんですね。

子どもの頃はよく草っぱらで遊びながら歌ったものでした。皆さん覚えてますか?

 

私たちが歌を聞いたりしている内に、バッタはエンヤコラと隙間から出てきて、私の麦わら帽子の縁に捕まりだしました。

長ーい後ろ足がなかなか縁に引っかからなくてバッタは苦戦しています。

途中で諦めたようで、前の足2本で捕まって、暫く休憩しています。

ショウリョウバッタって、面白い顔をしているんですよ。ウルトラマンみたいな黄色の目も神秘的です。

2本の尖った触覚をピンと揃えて伸ばしていたので、指でチョンと触ろうとすると、サッと左右に開いて避けられてしまいました。

こちらの動きを見ているようなのに、それから暫くたっても、このバッタ、私の帽子からなかなか跳んでいきません。

バッタって、すぐびょ〜んと行ってしまうイメージだったなぁ。と夫。

いつまでも帽子に引っ付いているバッタが可愛くなってしまったようで、それからも楽しそうに話しかけては遊んでいました。

 

 

その内、バッタの方が飽きてしまったようです。のそのそと動き出し、帽子から草原へはい出ていきました。

バッタは何考えてるのかなぁ?と、夫はお名残り惜しそうでした。

 

さて、ここに来た本題は、「川の水に足を浸す」でした。これは夫の提案です。

遠くに聞こえる子どもたちの声の方へと近づきます。膝下までの深さの小川で親子づれが魚を捕まえています。

浅い川底の谷間を魚が群れて通り過ぎます。

光の網がゆらゆらと揺れています。

いつぞやか語り合った、国語の教科書に載っていた宮沢賢治の「やまなし」の一節を思い出していました。

魚の泳ぐ川の中の世界を想像しながら、その光の網を見ていました。

 

夫は向こうの山際を目指して進んでいきます。山際は影になっていて更に涼しげで魅力的に映るのでしょう。

でも意外と川底は岩が多く、苔でツルツルして危険です。

足を浸すだけって言うから、川の中に入る用の靴を履いていません。裸足も危ないので、止むなくサンダルで入りましたが、気は進みません。

それでも夫が誘うので、恐る恐る歩を進めました。

山際の木陰はマングローブの島の木陰のようで良い感じです。でもちょっと深そうなのでさすがに断念し、元来た方へ戻ることにしました。

ところが、今来たルートなのに、反対から見ると光でよく足元が見えません。

どこに足を運べばいいか、分からず不安です。夫が「こっちに来るといいよ」と先に違うルートへ行き誘導してくれようとしましたが、その方面は岩が尾根のように尖っているところです。

いやいや、そんな上を歩くなんて無理だって。

そう思い、なんとか元のルートから戻ろうとしたその瞬間。

つるっ!

 

なんと気がつけば、川に腹這いになって浸っていました。

一瞬でした。

全身びしょ濡れです。

膝も打ちました。

 

あ〜あ。やってしまった。

夫が「なにやってんの〜!だからこっちって言ったのに〜!」と叫んでいます。

 

やめとくれ。周りの人の前でそんな風に大きな声で言われることほど恥ずかしいことはないよ。

「しぃーっ!」とジェスチャーをしました。

 

まぁいいよ。周りの子どもたちだって、バチャンバチャンと滑ってコケているもの(笑)

はいはい。さあ、上がりますよ。

開き直ってずんずん歩いて上がりました。

 

着替え?

そんなものは持ってきていませんよ。だって、「足を浸す」ってだけ聞いて来たんですもの。

 

その後、どうやって帰ったかは、皆様のご想像にお任せします。