先週末。
いつも参加している障害を持った子どもたちとその保護者の運動の会があった。
年度末ということもあって、午前は運動、午後は親睦会としての会食になっていた。役員さんと指導者との交流の場だ。
午前中の運動は、いつも通り子どもの部、大人の部に分かれ1時間ずつ。
そのどちらもに最後ダンスがついていて、前で見本として私が踊っている。
この頃、低学年の女の子が私の横に来て、一緒に見本役で踊ってくれている。
2回とも同じダンスなのだが、子ども向けだけど、真面目に踊ると結構しんどい。エアロビくらいの運動量だろう。したことないけど。
見本となれば、やはり動きは大きく、腕はしっかり伸ばし、躍動感を持って踊らなければならない。見本がだらけると、子どもたちもつられてだらけてしまうからだ。だから毎回私は汗だくになって踊っている。
その日もその女の子が2回目も横で踊っていたのだが、佳境に入った頃、咄嗟に私の方を向き、「しんどい!」と言った。
「これしんどい!私、2回目なんだから!」と。
笑ってしまったが、いや、わかるよそれ!と思い、
「しんどいよね!先生だって、2回目だよ!」と返した。
「あ、そうか!」
といって、その子は脱落することなく最後まで踊りきっていた。
なんか、こんな瞬間が面白いんだよなぁ。
大人とか、子どもとか、関係なく、同士みたいになる瞬間が。
毎回運動の始まりには、広い室内をみんなでぐるぐる音楽に合わせて歩いたり回ったり走ったりするプログラムがある。
いつもやってくる飄々とした女の子。ポーカーフェイスで誰とでも馴れ馴れしくしない。
なんなら声をかけられても返答しないことも多い。
だから余計にハッパをかけて関わりを持ち、気持ちを動かすことで体を動きやすくして運動に繋げている。
そういうこちらの意図がきっと伝わっているのだろう。最近は促しにのって、活動的になってきた。
その子が会ってすぐ、始まりのプログラムで歩く私の横に来て言った。
「私さぁ。今日大変やってん。便秘。」と。
「すごいお腹痛くて大変で。」と。
「そりゃ大変やったな。水分が足らんのやろ。気をつけて飲まなあかんよ」と返したら、
「そうやねん。私も前の晩から気づいててんけどな」と言う。
「でも、ポン!って詰まってたのが出たから大丈夫になった♪」と続けて話し、離れていった。
なんだか、それがとても嬉しかった。
障害を持っていると、自立神経が上手く働かなかったり、腸の動きが悪かったり、喉の渇きに気づきにくいことがある。
そんな自分の体調に気づけないことも多いし、異変を上手く他者に伝えられないことも珍しくない。
普段誰にでも心開かない、ポーカーフェイスの彼女。しかも、思春期の女の子が、こういった話しにくい話を朝イチから打ち明けて、自分から話しだしてくれたことに、何とも言えない感慨深さを感じたのだった。
そんなささやかだけれども、子どもたちの心に触れると、この上なく私の心は喜びに震える。
その後、この出来事をお母さんに伝えた。
始めのダンスの子のお母さんは笑い、後のポーカーフェイスの子のお母さんは驚いていた。
「恐らく、学校の先生にもそんな話はしたことがないと思う。」と仰っていた。
私にそれだけ心開いているということに、お母さんも喜びを新たにしてくれていた。
私はその子と毎回会うことを楽しみにしている。
だからだろうか。
以心伝心。
新しく入った幼い兄妹は、はにかみ屋さんで私が近づくと下の妹ちゃんなどは逃げていくこともある。それでも小さい身体で頑張っている側にいき、さりげなく補助をして助けてあげていた。お兄ちゃんは、緊張型で体が強張りがちだ。運動神経はいいけれど、失敗が嫌いなので、未知のものにはよりつかない。そこで安全基地として私が側にいき、ひっそり説明をしたり、気持ちの安定を図りながらサポートしていると次第に解れて動きだすことができる。
ついて来ていたお祖母様が、「この二人は先生に一番懐いている」と言ってくださった。その途端、いつも緊張して強張っている幼い兄妹が、手を広げ、私に抱きついて来てくれた。
不意打ちのご褒美に、なんとも幸せな気持ちになった。
あんたたち、分かりづらいけど、ちゃんと懐いてくれてたんだね。と。
勿論目線で分かってはいたけれど、こうして屈託なく表現してくれると間違ってなかったな、って分かって嬉しい。
この仕事は、独りよがりではいけない。
いつも子どもたちの心の動きを把握しながら立ち回らなければならないけれど、子どもたちに寄り添いすぎても、媚びてもいけない。
大人だけど大人ぶらず、心砕いてないようだけど、心砕き、私という存在を打ち出さないけれど、それにより打ち出している。
それを子どもたちはちゃんと感じとっている。
以心伝心。
その日のダンス。曲がもう終わる、、、という頃になって、プツリと音楽が止まった。
え!と驚いた子どもたちが、なんで!?と詰め寄る。
慌てた担当していた先生が、「もう一度行ってみよう♪」と言って、なんともう一度曲の初めからかけ直した。
ええ!もう1回?まじで? と思ったが、速攻切り替え「行くよ〜♪♪♪」とみんなに声をかけた。
ところが途中で曲が速くなる。振り返ると担当の先生たちがくすくす笑っている。
2回やると時間が足らなくなるから、早送りにしているのだ!なんと!
しかし逆境は楽しむもの。
その早送りのリズムにぴったり合わせて、高速ダンス!!!どうだ!
すると、目の前に小さな男の子たちが、その速いテンポに炙り出されたように出てきて狂ったように踊りだした。
ADHDの子どもたち。体の持つテンポとリンクしたんだね!と可笑しくて。あはは、と笑いながら最後まで踊りきった。
丁度、椎名林檎のライブで、宮本浩次が登場し「獣ゆく細道」を転げ回りながら歌い、それを椎名林檎が愛しく微笑み見守りながら歌っている動画のようだった。
こちらが楽しめば幼い子どもたちにも伝わる。
以心伝心。
ハプニングだったが非常に面白かった。
午後の親睦会の頃。
時々参加している夫も一緒だった。
和やかに会食が終わり、役員さんたちが諸々の相談をしている間、子どもたちと一緒に遊んで待っていてあげた。
しりとりにも飽き、連想ゲームをしていたら、ようやくお母さんたちの話も終わりを迎えた。
でも最後に、私と、夫が連想するものをそれぞれ当てたい!と子どもたちが言う。
咄嗟に私は連想したものがあったが、じゃんけんで夫に負け、先に夫が連想したものを当てることになった。
しばし、うーんと夫は唸り、連想していたが決まったようでゲームスタート。
ところが何だか混線して、みんなの会話がよく聞き取れない中、誰かから「ケーキ」という言葉が聞こえたような気がして、
「私が連想してたのケーキだったんだよね〜」と言ったら、みんなが「えっ!」と驚き、「2人で同じこと言ってる!」と言うのだ。
は?何のこと?と咄嗟に訳が分からなかったが、どうやら夫が連想したものが、「ケーキ屋」だったらしいのだ。
なんと、夫婦で同じことを連想していた。
たまげて、お互い顔を見合わせた。
きっと疲れて甘いものを欲していたんだろう。時間は15時すぎだった。
日常的に、私が何か頭に思い浮かべた瞬間に、夫の口からその言葉が出る、ということが多い。
以心伝心。
脳の作りも違う。見ている世界も違う。
遺伝子も違う。何もかも違う。
なのに、空間を伝わって心が、思いが、伝わり通じる。
きらめきが、そこら中に降り注ぐ。
面白いよね。