奈良でなくても町の中で、喫茶店だったりスナックだったり、お店の名前として「まほろば」という言葉が使われていることが時々あって、どういう意味かなぁとずっと気になっていました。
「まほろば」とは、素敵なところ、理想郷、という意味なんだそうです。
日本武尊(ヤマトタケルノミコト)が読んだ和歌に、この「まほろば」という言葉が出てくるそうです。
「倭は 国の真秀ろば 畳なづく 青垣 山籠れる
倭し 麗し」
ここには、「まほろば」は「真秀ろば」と書かれています。「真秀」とは「ものごとが完全であること」という意味のようで、この歌には、大和な国が一番美しく素晴らしい場所だと書かれているとされています。
また、一方で「真穂等場」とも書くという説もあるようで、稲穂や農作物が豊かに実る場所、という意味だそうです。
山が青垣のように連なり美しく、農作物が豊かに実る、となれば、そこは正しく、〈どこよりも素晴らしい場所。〉ということになりますね。
奈良には「安堵」という地名もあります。この安堵町から風景を眺めると、確かに、見渡すかぎり平坦な地が続き、遠くには低い山が幾重にも重なっています。今では穏やかで建物も少なく、少し寂しげな感じも受けますが、日本武尊がいた時代には、金色の稲穂がたわわに実り、険しくない山に囲まれて、平和で住みやすく、ホッとできる素敵な場所だったのでしょうね。
〈安堵〉と〈まほろば〉
他にも斑鳩や法隆寺、東大寺、平城京など、好きな土地もたくさんありますが、そういった存在感のある建造物の魅力とはまた違い、悠久の時を越えて、昔の人々が見ていた奈良の豊かさというものを初めて知り、今更ながら、そんな素敵な土地だったんだなとなんだか感慨深く感じました。