きらめき 綴り

療育アドバイザーとして活動しています。日々の心の煌めきを大切にしています。

台風一過な子どもたち。

台風14号は、夜の間に無事私の住む地域を抜けていきました。前評判が大きかっただけに、やはり心配しましたがホッとしました。

この辺りは私が子どもの頃から、台風の影響が比較的少なく思います。昔は「明日台風で学校休みになるかな?」と期待しても、殆ど警報は解除されて休校にはならなかったので、いつもとても残念でした。それくらい、影響が少なかったというのは有難いことですよね。

台風のような低気圧が近づいて来ると、発達障がいの子どもたちの多くは敏感に感じとるようです。

やたらと機嫌が悪いなぁ、ケンカばかり。

落ち着かないねぇ、怒られること余計にしてない?

大声や奇声がでちゃう。

どんよりしてる、或いは興奮気味?

今日はどうしたのかな?

という時、その後にドカッと雨が降ったとか、台風が近づいてたということに気づくことが多々あります。

私たちの多くがキャッチできない、目に見えない何かを子どもたちはキャッチしているのです。

キャッチしてしまう本人たちも、しんどくて大変ですが、ご家族のご苦労もまた大変なものです。台風が来ることで起きる不調や異変。それを多くのご家庭は家の中だけで対処しています。

子どもたちも毎年経験を積むごとに、

これは「台風」というものらしい。

風がビュービュー、雨はザァザァしているけれど少ししたら止まるらしいから大丈夫。

イライラ、ムカムカ、どっしりしんどいのは「台風」のせい。

と上手く学んでいくことが出来ると、本人とご家族もずいぶん楽になるのではと思います。

しかし、言葉を持たない子どもに台風、風、雨、暑い、ムシムシする、イライラ、しんどい、といった形の無い抽象的なものをどうやって教えますか? 

私たちは、言葉を持たない人の世界を体験することはできません。何故なら、言葉を持っている時点で「言葉を持たない人の世界は・・・」とすでに言葉で思考しているからです。例え「言葉で思考しないように・・・」と考えてもその時点で言葉で思考は始まっています。言葉を持つ時点で言葉を持たない人の世界を本当の意味で知ることは不可能になってしまうのです。

ただ、私たちには想像力があります。本当に知ることは出来ないけれど、想像力を働かせて、その人たち側に立って、その人たちの身になって、近い世界を考えることはできます。

とすれば、実際に台風が来て、強い風がビュンビュン吹いているところを窓越しなどから一緒に見て、ジェスチャーで木が揺れている様子、ガタガタ戸が揺れる様子などを表現し、「風」。雨がザアザア降っているのを表現して「雨」。そしてその両方を表現して「台風」。と教えてあげないと、何もないところで教えられても何のことか分からないということに気づきます。

その前の準備として、普段からそよそよとそよぐ「風」、暑いときに吹いてくれると気持ちいい「風」、というものを頬などに当ててあげて、これが「風」だとジェスチャーと「かぜ」という音声の両方をマッチさせて繰り返し教えてあげておくという必要もあります。

この時のジェスチャーとは、手話のような言語をある程度の理解している人が使うものではなく、言語がなくても表すことができるジェスチャーや「マカトン」が有効です。

これが台風というものか、と少し理解に入ったら、忘れず「でも大丈夫」と安心をあげることも忘れずに。

「大丈夫」ほど抽象的なこともありませんが、信頼する人がドキドキする場面でいつも「だいじょうぶ」という音を発した時は、その後も危険は起きなかったという経験も積んでいくことで「大丈夫」という概念を獲得して、この「台風は大丈夫」とやがて腑に落ちていくことができるようになるのです。

大人も子どもも、この「大丈夫」という概念を共有して、家の中で落ち着いて穏やかに過ごせるといいなと思います。

 

ところで、動物たちは嵐が来ることを事前にキャッチできることはよく知られていることですが、人間はいつの頃からか、キャッチできないようになりました。そう考えた時、発達障がいなどの障がいを持つ方の中で、これをキャッチできるとされている人たちはある意味きちんと本能を残して持つことができているということかもしれません。私たちより余程高性能な感覚を持っているのかも。私たちも負けずに、子どもたちが不穏な様子を出していたら、「これは低気圧がくるせいだな💡」と閃いて、狼狽えず落ち着いて対処してあげられるようになりたいものです。

 

さあ、陽が差し込んできました。どんより雲も少しずつ晴れていきます。台風が去った後の上天気を「台風一過」といいます。こんな時、子どもたちもぐぅ~っとのし掛かっていた重石が外れ、清々として、上機嫌になるものです。

昨日までの不調や不穏が、まるでなかったかのように。

今日はそんな台風一過な子どもたちにきっと会えることを楽しみに、

「行ってきます☀️」