きらめき 綴り

療育アドバイザーとして活動しています。日々の心の煌めきを大切にしています。

片羽のてんとう虫。

4月28日午後のこと。

 

 

今は地面に寝っ転がって、この記事を書いています。

 

少し人里離れたところに自然の中でゆっくり過ごせる場所がありまして。ちょくちょく夫と来ております。公民館的な建物の後ろに広い広場があり、対面に見える山並みの裾には小川が流れているのです。

とてものどかで平和な場所です。

 

GWといっても、特に予定はありません。どちらかというとゆっくり命の洗濯ができればいいのかな、くらい。

だから、今日はここで、うぐいすの声を聞きながら、木陰にシートを敷き、寝っ転がって風を感じてうとうとしています。

今日はさすがに家族連れがいつもよりは来ていて、小さなテントを広げ、周りを小さな子たちが喜びの声をキャッキャとあげて駆け回っています。

川に入って魚やエビを取って遊んでいる子もいます。

虫取り網を持って右に左に何度も往復して走っている子もいます。

近くの木にいるであろう小鳥たちが、ずっとピチピチ囀り、子どもたちが始終元気な声を上げているのを聞いていると、まだまだ生きる喜びが全身に漲っている生命力を感じます。

 

幼児親子体操教室の子ども達も、体育館に着いたらすぐに走り出し、始まるまでに疲れるよ〜とお母さんが心配しても、嬉しくて嬉しくて止まることをしりません。そしてプログラムの中程で、やっぱり力尽きてしまうのですけれど。子どもたちは待ったなし。そのエネルギーが尽きる極限まで動き倒しですね。

だいぶ命のエネルギーを使ってしまっている大人たちには、それはひたすら眩しく熱く、ずっとそばにいれば火傷しそうになるのも無理はありません。

今、子どもたちを育てているお母さん達は、本当に大変だな、、、と、いまや少し距離を持って関われている私は思うのです。

 

「小鳥たちはなんて言ってるのかなぁ?」

「なんにも言ってないのかもよ!?」

「ただただ、囀れることが嬉しくてピチピチ言ってるのかも。」

「子どもたちも、ただただ生きていることが嬉しくて、うふうふ、キャッキャ言っているのかもね。」

「静かにって言っても、そりゃ無駄だね(笑)」

なんて言いながら、かなりエネルギーを使ってしまっている私は、ずっとシートに寝転がったまま、この光景を眺めています。

 

最近は、空も勿論大好きで、いつもいつも眺めているのですけれど、歳を重ねるにつれ、足元の小さな小さな草花や、小さな小さな虫たちが気になるようになりました。どうしてそんなミクロな体で、ちょこまかちょこまか動き回ることが出来るのか、不思議でしようがないからです。

 

確か、以前にもここの同じ場所で、小さなアリを眺めて、感心した記事を書いていました。

kiramekituzuri.hatenablog.jp

 

今日の風は本当に爽やかで、何度も眠りに誘われて、結構長居してしまって、そろそろ帰ろうか・・・と、靴を置いた場所を見ていると、夫が、

「あ、てんとう虫がいるよ」

と指差しました。

「どれどれ?」

と私。

この春初めてのてんとう虫さんだぁ!

二人で喜んで覗き込みました。

 

アリと同じように、このてんとう虫も6本の足をしきりに動かして、葉から葉へ、どんどん渡っていきます。まるで綱渡り。

間近で見ている私たちに気付いているのでしょうか、てんとう虫は、葉の先端に出てきたときは、飛び立とうと羽を広げます。

でもすぐに畳んでは、また広げ、すぐ畳んでは、また広げ・・・。

なんだか同じ側の羽ばかり広げているような気がします。

うん。やっぱりそうだなあ。

右側の羽がうまく開かないみたい。

左の羽はスポーツカーのガルウイングのように大きく開き、中の薄い薄羽も伸ばしてみるのですが、右は一向に動きません。

何度も何度もチャレンジしています。

 

こんな時でもなければ、なかなか薄羽をゆっくり見る機会はありません。

それはまるで黒くて透けた美しいドレスのようでした。

 

初めは、たまたま右の羽をしまう時、畳み方が悪くて出にくくなったのかな?と思いましたが、違うのかもしれませんね。もしかしたら羽化して乾かす時に、充分羽を広げるスペースがなくて、変に折れ曲がっているか何かで飛べなくなってしまった子なのかもしれません。

 

飛びたいよね。

 

とても健気に見えました。

 

そのうち、飛べないてんとう虫は、歩き回ってどこかに消えていってしまいました。

 

さあ、私たちも帰ろうか。と、シートを畳み、車に戻りましたが、お昼におにぎりとお団子しか食べていなかったので、近くの道の駅に戻り、少しのおかずを買って、裏の川岸のベンチに座り、ここでも川で遊んでいる子どもたちを眺めながら食べていると、柵の向こうの土手に、黄色くて小さな草花が一面に咲いていました。

「見て、またてんとう虫がいる」

夫が教えてくれました。

「あ、こっちにも。あ、あっちにもいるよ」

見ると、あっちにもこっちにも、またその向こうにも、5、6匹のてんとう虫が、さっき見たのと同じように草の間を動き回って、見え隠れしています。

こんなにたくさんのてんとう虫がいるのを見たのは初めてかもしれません。

今日はてんとう虫にご縁のあった日なのかも・・・などと思いながら、しばし観察。

こうやって、草の間を動き回っているのは、そうやってアブラムシを捕食しているのかもしれませんね。

 

それにしても・・・、ここのてんとう虫たちは、一匹も飛ぼうとしません。

 

みんな背中にはっきりと星が見えているので、羽化し立てではなさそうです。なんとなく、ここの虫たちは、飛べないわけではなさそうだ、と感じていました。なぜなら、ここの虫たちは、飛ぶことなんて今は考えてもいないようだったからです。

飛べる子たちは、飛ぶことを必死に考えなくていい。

飛べないからこそ、なんとしてでも飛びたくて、一生懸命にチャレンジする。

 

私たち人間と、さっきの左羽だけのてんとう虫の健気な姿が重なって思えました。

 

 

 

あの小さなてんとう虫はまた明日も、飛べるまで、飛びたい!と果敢にチャレンジしているかもしれません。