休日の午後、BING AIで遊んでいた夫が、何やらクスクス笑っていました。
BING AIは、有料版Chat GPT4と、言語モデルを同じとしたものらしいです。
男の人は目新しいものが好きだなあ、と思いながら、何が面白いのか?と聞いてみたところ、
「AIは絵も描けるんだって。だから、
"0-100km/h加速5秒"の車の絵を描いて、と頼んでみたんだ。どんな絵を書いてくれるか楽しみ♪」
という返事。
その時まだAIは絵を制作中でした。
さて、どんな絵ができるかな?と期待値が上がります。
数秒後・・・
はい!4パターンほどタイプの違う車の絵を出してくれました!
「お! ほぉぉぉぉぉ〜・・・」と、覗き込む私たち。
よく漫画で使われる手法の、速さを出すために車の周りにシャシャッと線を書いたものが2パターン。他には0-100km/h加速5秒を横に書いたものが2パターンありました。
そのどれもがスポーツカーのような車です。でもすごく簡易的で、ほぼアウトラインだけのざっくりした絵でした。
「え?求めていたのは、こういう絵?」
私はてっきりその速さで走ることのできる現存の車種か、またはこれから実現するにはどんなデザインなら可能かを予測したものを出して欲しいのかと思い、聞いてみたところ、
「わざと曖昧な指示を出してみたんだよ」というのです。
AIが、今、こちらから出された言葉をどれくらい理解し、こちらの意図するものを出すことができるのか、調べる為に、わざと曖昧で、理解に困るような指示の出し方をしたんだそうです。
通りで。AIが悩んだ形跡が見て取れる絵が出てきたわけだ。と、妙に納得。
「スピード感を出した」もの2つと、その「スピードを文字で書き添えた」もの2つ、という表現法で示したところは、考えたなぁという感じです。
「今度は、0-100km/h加速3秒"にしてみよう」と、夫。2秒の差を、さあAIはどう表現するかな?
AI作成中、、、。
なかなか出ません。
うんうんとAIが悩んでいる様子(笑)
しばらくかかって、、、。
じゃん!出ました。4パターン。
あれ?なんか、さっきより雑になってない?
加速5秒と加速3秒では、当然3秒の方が100km/hに達するのが速いはずなんです。それはAIも分かってるみたい。でもそれをどう表現するか?ということで、
5秒の時に書いたように、アウトラインだけで、線の周りに速さを表す線をよりたくさん入れ、そのアウトラインもジャジャッと速さでかき消されるような印象に書いたものになっていました。だから雑に見えたんです。そう来たか。
はは〜ん。AIも頑張ったなぁ、とニヤニヤする私たち。
AIにしてみれば、私たちがどういう意図で要望しているか、最低限の情報だけで絵を書かないといけないのだから、迷うよね。その迷った挙げ句、横に「0-100km/h加速3秒」って書くという苦肉の策に繋がったとしたら、その判断をしたAIが、なんだか可愛く思えるなぁ。と、ちょっとキュン。なんか、人間味ありません?
それにしてもAIは、過去については学習しているから答えることができても、これからの将来のことについては、今のところデータがないから出せないようだ。
次はねぇ。と言って、また夫が何やらAIに注文しています。
「ドラゴンの絵を描いて」
AI作成中、、、。
じゃん!出ました。4パターン。
胸から上だけのドラゴンの絵が。顔は上手に描けています。ドラゴン、知ってたんだなぁ。
でも、ちょっと私は不満足。龍が好きな私は、子どもたちとお正月にあげるクニャクニャ凧の見本に、龍を書いた女です笑。ちょっとこだわりがあります。もう少し迫力がある絵が描けないかなぁ?ということで、AIに頼みます。
「もっと迫力のあるドラゴンの絵を描いて」
え?もっと?ってAIが考え中(の気がした)。
じゃん!はい、描けました。4パターン。
あれ?やっぱりお腹辺りまでしかないよ?手は上手に描けてるけどね。ただ、確かにさっきより絵のタッチに凄みが加わったね。でもなぁ、、、。
う〜ん。私はもっとこう、迫力がある、長〜い、うねっている龍を描いて欲しいんだけど、どう言えばいいのかなぁ?
では、「ドラゴンの全身を描いて下さい」。
AIの、え〜っ、無茶言うなぁ(汗)って声が聞こえてきそうです。
しばし考え中。
じゃん!(これならどう?by AI)
あ、、、全身っぽいけど、体が短いね。胴体からすぐ尻尾になる。背中に羽があるなぁ、、、。う〜む。と考える。
あ〜!!、もしかしてこれって、そうかぁ!!と、ある事に気がつきました!
AIが描いてくれたあの絵、あれは”ドラゴン”。洋風「ドラゴン」だったんだ!と。
私の頭の中では、ドラゴン=龍だった。あの全身が長くて大蛇の様にトグロを巻いていて、空を飛ぶ時はウネウネと体を捩って飛ぶ、あの「龍」。
だって、ドラゴンボールの神龍だって、洋風ドラゴンの形じゃなくて、正しく東洋の龍の形でしょ?Googleで調べたって、ドラゴンとは龍とイコール。ただしアジアでは。でも遥か昔はやっぱりドラゴンといえば、長い体をしていたそうです。
だから、私が「ドラゴン」と聞いて、「龍」を思い浮かべても、それは何らおかしい事ではないし、逆に、Chat GPTはアメリカが開発しているのだから、ドラゴンと言えば体が短く、背中に羽が生えていて、空を飛ぶ時はその羽をパタパタさせて飛ぶ、あのドラゴンを割り出して描くこともまた、当然のことでした。
AIは、アジア圏ではドラゴン=龍というイメージがあることは、まだ学習していなかったのかもしれない。
そのことを、私たち側が知らずにずっと頭の中では「龍」をイメージしながら「ドラゴンを描いて」と指示を出していたことが、そもそもこの私たちとAIとの間のすれ違いをもたらしていたということになるのです。
それさえ分かると、なんだか急にAIが可愛く愛しく感じられ出しました。
「そうかそうか、君は洋風ドラゴンとして描いていてくれたのか、なるほどね」と声をかけ、今度はこちらから出す指示を改めます。
「龍を描いて」
AI、考える、、、。(龍ね)
じゃん!できました。4パターン。
「おう、龍になったね。でもなんだかちょっと細くて貧弱」
『迫力のある』『龍』の『全身』を描いて、と再度注文を出しました。
ひぃ〜、まだ合格じゃないの〜?とAI(が言っているような)。
AI検討中。
じゃん!できました!4パターン。
「オ〜!!迫力ある〜!全身が描けてる〜!これぞ、龍!」と、これぞ龍!という私も満足のいく合格点の龍を、やっと描いてくれました。
めでたし、めでたし。
学習中のAIに、こちらが思い描いていることを読み取り、理解してもらうにはまずこちらがAIの理解の仕方を理解するスキルが必要だとは、今よく言われていることですね。
AIが私たちの言葉を学習し理解する前に、まず私たちがAIの特徴や理解の仕方を学ばなくてはならないなんて。それじゃあ、私たちのコミュニケーションの方がAI寄りになって、変化していってしまうんじゃない? そう思っていました。この時まで。
でも、私たちからの指示に対して言い返す訳でもなく、一生懸命(?)沿おうとするAIを見ていて、なんだか擬人化してしまい、愛おしくなるこの感じ、何かに似ていると私はすぐに気が付きました。
この感じは、自閉症のお子さんに働きかけている時の感覚に似ている、と。
私たちは、自閉症のお子さんに話しかける時、得てして自分たちの頭の中で想像しているものを、自分たちが理解しているからきっと伝わるだろうと思い込んで話しかけます。
言葉を獲得している自閉症のお子さんなら、特に私たちは自分の使う言語が通じると信じて疑いません。
だから、私たちが、当然返ってくると期待する返事とは全く違う表現や言葉で反応が返された時、びっくりしたり、困惑したりするのでしょう。
自閉症のお子さんたちからしてみれば、言葉を字義通りに受け取ってしまって、言葉の裏にある意図などが掴みにくい中で一生懸命考えて答えただけなのに、「違う」とか、「なんで?」とか、何が違うか分からないのに何度も同じ質問をされたりして、どんどん焦り、困惑してしまい、しまいにはパニックになったり、人と話すことに自信がなくなって避けるようになったりしてしまうのだと思います。
また、興味関心も狭い範囲で深く持つことが多いので、習得している知識も、その範囲に限定されやすい面もあり、私たちからの言葉がけから、自分なりの解釈で思考した時、思わぬ思い違い、捉え違いが起こっている場合があります。
今回の、「ドラゴンと龍」の様に、私たちにとってみれば、頭の中に浮かんでいることをパッパッと表現してやり取りする内に、なんとなく相手が想像していることを掴んで理解する地点がくれば、言葉足らずでも、「あぁ、きっとあの人はこのことを言いたいんだな」と、何となく「分かる」ことだけれど、自閉症の方は、相手の想像することと、自分が想像していることの違いに関心を寄せたり、理解に努めようという積極的な行動には繋がりにくく、なかなか「僕は(私は)こういうことを今想像してるんだよ」とか、「あなたが言っていることって、もしかしてこういうこと?」といったコミュニケーションとして、お互いの相違を埋めようと働きかけることが少ないので、私たち側も、お互いの理解の間にそれほどの違いがあることに気づきにくいということが起こります。
また、普段なら当たり前に通じる話し方が、自閉症の方には通じなくて、私たち側の方が困惑し、どうしていいか分からなくなり、パニックになって、自閉症の方との接触を避けてしまうことに繋がっていくのかもしれません。
では、どうすれば、自閉症の方とスムーズなコミュニケーションが出来るのでしょうか?
答えは、私がAIに働きかけた様に、AIの立場に立って、AIの持っている言葉の知識や、解釈の仕方といったAIの特性や特徴から、AIが今、私たちからの指示を受けて、どんな解釈をしているか?どんなことを思い浮かべているか?ということを考えて捉えていくこと。
その為に、私たち側から発する言葉の形をAIにしたように、変化させること。
なのです。
今、AIが私たち言語の学習中であるように、自閉症の子どもたち、そして大人になった方たちもまた、学習中なのです。
まだ学習中なので、ある程度学習を済ませている私たちの方が、AIや自閉症の方たちに合せて、AIや自閉症の方たちの気持ちや、置かれた立場や、理解の仕方や言語パターンを理解しようと努め働きかけることの方が簡単なはずだし、大切で重要なことなのです。
AIに多大なる関心と興味を持つ今の時代に生きる皆さん方なら、AIに対して向けるその情熱やスキルを、自閉症の方たちの言語パターンを理解し自閉症の方たちが理解しやすい言葉のかけ方に変換するスキルとして身につけることは、あっという間にできることなのかもしれません。
逆に言えば、自閉症の方たちと上手に関わることができるスキルを持った人ならば、AIに対しても上手に指示を出すことができるのかもしれないな、と思ったのでした。
そう考えると、自閉症の方たちに接する事、働きかけること、共に生きていくことは、皆さんが思うほどそう難しくなく、コミュニケーションを続けることで、お互いの生きる世界が交わりだして、意思疎通ができる瞬間が発生しだし、やがて、心通じ合う時が訪れるのだと思うのです。
実際に、そうした時を経て、今私は多くの人が難しいと悩む方たちと心通じ合い、豊かで楽しい時を過ごすことが出来ているので、間違いありません。
AIに傾ける情熱を、もっと奥深く、豊かな世界を持つ自閉症や障がいのある、かけがえのない仲間にも、向けてみませんか?
きっと、私たちの心に素晴らしいきらめきの瞬間をプレゼントしてくれるはずです。
さて、9月は今日が最終日です。
今回は投げ銭的有料記事としました。
何か心に感じるものがあった方は、よろしくお願いします。