きらめき 綴り

療育アドバイザーとして活動しています。日々の心の煌めきを大切にしています。

職人に学ぶ。

私が住む建物は、10年に一度の外壁塗装に入り、現在足場を建設中です。足場ができたところから順にブルーシートがかけられていきます。足場を組むときは窓を施錠して、開けないで下さいとのこと。

こんなに暑いのに、クーラーがない人はどうしたらいいんだろう?

と、困惑するばかり。

ま、仕事の日は日中いないからいいか?と開き直り、まだまだこちらの棟までは来ていないので、たまの休みの日は、他の棟に足場が組まれていくのを「気の毒になぁ」と他人事の様に見ていました。

まだ夏真っ盛りの頃、その日も足場は組まれていきます。朝から割りと大きな音がカンカン、ガシャンとなり、職人さんたちの声が響きます。

こんな暑い時に大変やなぁ。

あんな狭い通路を歩きながら、落ちたら怖いし、危険な仕事やなぁ。

と思いながら、初めはボーッと見ていました。

次第に、

全部の棟に足場を作ってから塗装を始めるのかなぁ。

そうすると、やたらと日数かかるよね。

足場を作ったら、違う塗装班が来て塗っていって、どんどん塗れたところから外して次の棟に足場を移動してゆけば効率的かもしれないのになぁ。なんでそうしないのかなぁ?

という疑問が沸いたりもしました。

職人さんたちは、10時と3時はおやつの時間です。 今夏に亡くなった植木職人のお姑さんがそう言っていました。職人さんたちは時間にきっちりしています。足場の職人さんたちも、やはり同じ時間には音が止むので、手を止めて休憩しておられるようです。休憩するといっても車の中ですからねぇ。この暑さの中、疲れた体が休まるとも思えないけれど、この10時と3時の休憩は、熱中症予防と体力回復の為にも、とても大切な時間だなぁと思いました。

そのうち、職人さんたちの声が気になってきました。結構大きい声で、仲間の名前を呼び、指示をしています。結構厳しいし、よく聞かなかったら怖い感じも受けますが・・・、よく聞いていると、「おーい!○○!置くぞ!いいか!」と言うような確認のやり取りをしています。

とても細かい指示と確認をすることで密なコミュニケーションを取っているんだということに気づきました。

この暑さの中で、声を出すだけでも体力を消耗しそうです。喉もカラカラになるでしょう。

それでも、少しでもコミュニケーションを怠って足場が崩れたり、鉄筋が落下したりすれば危険に繋がります。事故を起こさず、自分たちの命を守るためにも、このコミュニケーションは欠かせないのだなと分かりました。

今週になり、とうとう私の住む棟にも足場がやってきました。

仕事から帰るともう結構上まで組まれています。

へえ、こんな風に組まれているのか。割りと興味もあったので、ちょっと足を止めて細部を見てみると、あちこちに留め具がきっちり留められています。様々な形の部品を丁寧に組み合わせて留められているその構造は、ちょっと見ただけではパターンが分からないくらい複雑です。

もう少しくらいはシンプルかと思っていました。

他の棟から部品だけ移動させてもいけるんじゃないかと思っていました。

だけど、ここの建物は、1つ1つが少しずつ形が違うし、凸凹が多い為、部品を丸ごとごっそり持ってきても寸法がまず合わないことにも気づきました。もしかしたら、建物1つ1つに設計図などがあるのだろうか?そうでなければ、こんな複雑な組み方できないよね。1つでもちゃんと留めていないと、これも足場が崩れる大事故に繋がる。

やっぱりこれは職人の技なんだ。

大変な仕事だ・・・。

端で聞いていると厳しい声も、仲間と自分を守る為に必須の厳しさなんだと今では思います。

 

私は療育の仕事をしています。

療育は命がけでないか?と問われれば、それはNOです。発達障がいのお子さんたちは行動も思考もスピードがとても速いですし、自閉症や知的障がいのお子さんたちも、しっかり見ていてあげなければ異物を口にすることもあります。私たちの目が離れた瞬間にケンカになったり、ドアから出ていってしまったりして事故とは常に隣合わせです。

だからこそ、命を預かる私たちの仕事にとってもコミュニケーションはとても重要です。

この仕事に慣れてくると、言葉数は必要ありません。的確で端的な言葉を交わすだけで意志疎通ができ、状況把握できて、咄嗟に行動できるようになりますが、それは理想で、そこまでできる人は数少ないです。

だとすれば、やはり逐一密に言葉を掛け合い、確認しながら連携することが一番です。

日々、職場の皆さんに、このコミュニケーションの大切さを説いていますが、この夏は、職人さんたちの姿から大切なことを学ばせてもらったので、職場の皆さんにも、この足場の職人さんたちの行動と密なコミュニケーションを紹介させてもらいました。

私たちも、子どもたちと顔を合わせる時は穏やかに。だけど、いつも気を引き締めて。密にコミュニケーションを取りながら、良いチームワークで療育を進めていきたいです。

 

今ではこの職人さんたちを尊敬しています。

今日も青空の下、職人さんたちが声を掛け合いながらお仕事しています。

ありがとうございます。