きらめき 綴り

療育アドバイザーとして活動しています。日々の心の煌めきを大切にしています。

子どもたちの困りごと〜体の動かし方編。

毎日子育てに奔走しているお父さん、お母さん、いつもお疲れ様です。

 

社員であろうが、パートタイマーであろうが、1日お仕事をしてクタクタになって帰宅してからの、こどもたちとの時間。

 

こどもたちは、やっと会えたご両親に「それ今だ!」とばかりに、精一杯甘えます。

甘えるなんて、言葉で見ると可愛いけれど、お腹が空いた!ねえねえ、お話聞いて!ぎゃ〜、お兄ちゃんが!と、それはもうサバイバル。心身共に疲弊しますね。

 

こどもたちを育てるのには、ご飯やお風呂、洗顔歯磨き、身の回りのこと全て、➕宿題、学校に提出書類、習い事••••と、凄まじい量のお仕事があります。

 

でも、これだけでは済まないですよね。

 

こどもたちが心身共に健全に育つ為の心配事があれば、それについても何とかしてやりたいと、手を尽くすというのが親の心情というものではないでしょうか?

 

目の前のおこさんたちを見ていて、上手くいかないことがあるようだけど、何が原因で上手くいかないのだろうか?

よく分からずに、叱咤激励をしてみる。

が、上手くいかない。

親子で煮詰まり、悶々とする日々。

という経験は、私も散々してきました。

だからこそ、ご両親の気持ちが痛いほど理解できます。

また、当事者である、こどもたちの大変さも痛いほど理解できます。

 

運動が苦手、好きだけどうまく出来ない、という気持ちを抱えて、実際に本人が状況を理解しているしていないに関わらず、こどもたちは困っています。

一体、何に困っているのか?

また、何が問題で困っている状況になっているのか?

について、お話ししていきたいと思います。

 

私は、我が子の子育てを通して得た気づきを元に、それを学校現場で大勢のお子さんと休み時間や体育の授業も含め過ごす中で、何が原因か?どうすれば改善できるか?を観察し、学びを深め、実践してきました。そして更にそれを元に療育施設で運動に取り組み、重度の障がいを持つお子さんの運動機能向上にも実績を上げています。

 

おこさんが上手く運動が出来ない、という時、原因は何か?という問題は、非常に大事だと思っています。

もっと言えば、運動とは、スポーツだけに止まらず、ご飯を食べる時や授業を受ける時の姿勢保持、箸の上げ下ろし等の生活基本的動作、歩行、模倣力、集中の持続力、指示の通り具合、意識レベルの向上、他者とのコミュニケーションと、挙げればキリがない程、私たちの生活に関与しています。

ですので、私は、運動は療育における大事な柱の1つであると考えています。

 

まず、私たちが何か行動しようとする時、1つの行動は、幾つもの段階を経て成り立っている、ということから始めましょう。

 

まず「目の前のペンを取る」という行動を簡単に考えただけでも、

①何か書く目的を思いつく。

②必要な物はペンだと気づく。

③ペンを探す。

④ペンを見つける。

⑤ペンまでの距離を目測する。

⑥ゆっくり手を伸ばす。

⑦ペンの形状に合わせて指を曲げる。

⑧持ち上げて引き寄せる。

と、まあ、これだけの工程が挙がります。

細分化しようと思えばもっともっと分けられるでしょうね。

 

運動や行動が上手く行かない時、細かく分けたどこでおこさんが躓いているのか?困難があるのか?を、まず見分ける必要が出てくるのです。

①②③は、そもそも、意識の問題です。何か書きたい、書こう、何で?ペンだ?探そう!という、意欲、思考、意思決定、行動生起ができるかどうか。④は眼球運動(ビジョン)です。⑤⑥は空間認知。⑦は手先の巧緻性。⑧は粗大運動、といった感じでしょうか。

 

行って欲しい行動や運動は、何が問題で支障が出ているか分かれば、その部分を補い、強化することに取り組めばいいわけです。

 

そして補い、強化するために、更に考えなければいけないのは、その躓きの原因です。

体の動かし方がわからないのか?

筋力がないからなのか?

神経が行き渡っていないのか?

ボディイメージが弱いのか?

協調運動が苦手なのか?

模倣力が弱いのか?

指示が通っていないのか?

など、たくさんの要因が挙げられます。

 

まず、おこさんはこちらからの指示や話し掛けが通じていますか?大人が一方的に話すだけではこどもたちの耳には入っていないことがあります。しっかり目を見て話してあげて下さい。

間違っても、怒って呼び続けないでくださいね。

 

こちらから、目が向いている方に合わせて動き、手をパンパンと叩いて音を出したり、「お〜い」と呼んだり、トントンと肩を叩いたりして注意を引いてください。目が合ったら話し始めます。

さあ、目が合いました。話も聞こえていそうです。ただ、聞こえてはいても、言葉のチョイスが目の前のこどもの理解と合っていないと、何をどうしなさいと言われたのか、よく分かっていないことがあります。

説明は噛み砕いて簡潔に。

そして、大振りのジェスチャーや、トントンといった動きを表現する擬音をつけることを忘れずに。

 

では動き始めましょう。見本を見せてみましたが、上手に真似ができません。これは模倣力が弱いのかもしれません。模倣力が弱いとき、指示はなんとなく理解でき、見本を見ることができていても、体を思うようには動かすことができていないことがあります。

それは何故かと言うと、ボディイメージが弱くて自分の体が今どんなふうになっているか把握する力が弱いからです。また、子供の内は、体の中の神経も未発達で、大人のようには上手く連携できていません。頭の中のイメージが、体の隅々まで行き渡らないのです。動かして欲しい部位があれば、的確にその部位をタッチして、その刺激によってこども本人が感覚的に動かす部位を掴むことが必要です。

特に、腰から下の下半身は、注意が向いていないことが多いです。手や上半身は、自分の視界に入りやすいので、意識が向きやすいですが、足などは意識してみないと見えないため、本人は動かしているつもりでも、実際は動いていないことが多いものです。

タッチして、動かす部位が分かったら、どの角度や方向に、どれくらいのスピードや強さで動かすと良いか、実際に動かしてあげることで伝えてあげます。本人に動いてもらいながら、少しづつ手を離したり、介入を減らし、スライドしていってください。

見本を見せる時は、必ずお子さんの視野に入っているか?見えているか?のチェックを忘れずに。

 

体を動かす中で、目の動かし方や目線が大切な場合も多いです。手元を見ればいいのか?前を見ればいいのか?それによって体幹への力の入り方や、バランスの取りやすさが変わります。

球技や、チームプレーが必要なスポーツでは、ボールや仲間を動きながら目で見て瞬時にキャッチする力が必要ですね。これらは眼球運動です。

 

動かし方は分かったし、説明も分かったけれど、思うように動けない。これは、筋力の問題かもしれません。

腕を大きく伸ばすだけでも腹筋背筋、腕の力が必要です。その場で高くジャンプするにも腹筋、背筋、太もも、腕を振り上げる力などが必要です。

必要な筋力が備わっているかどうか、見てあげて下さい。筋力が弱い場合は、違う動きで力がつくような遊びを取り入れてあげて強化してください。高学年なら、筋トレもいいでしょうが、園児や低学年では負担が大きく、楽しくないので続きませんから、楽しく遊びながら強化出来るものが最適です。

 

ボディイメージが弱かったり、神経が行き渡っていなさそうな場合は、口頭で、頭!膝!背中!腰!など指示を出して挙げて、瞬時にこどもが自分の体のその部位にタッチする、という遊びをしたり、体を大きく動かす粗大運動をとにかく繰り返し行います。

粗大運動を充分に行う内に、指先といった末端に神経が行き届くようになります。

 

他には縄跳び、跳び箱、ダンス、友達とリズムを合わすといった運動は、物や他者との協調運動が苦手な場合が多いです。まずは動きを解体して、1つ1つの動きをマスターしたのち、1つずつまた組み合わせてゆくといいと思います。他者との協調は、リズムを合わせるポイントを伝えます。どこを見ればいいか?掛け声は何がいいか?そしてタイミングなど。

 

長くなりましたが、上に挙げたことを、より効果的にするために最も大切なことがあります。

それは、一緒に楽しく行うことです。大人が楽しめるかどうかが鍵です。

そして、例えこちらの設定した目標には程遠くても、例えほんの少しの違いでも、少しでも努力がみられたり、できたことは、認め、褒めてあげてください。

 

こどもたちの発達は、一足飛びには成長しません。月日をかけて、継続して初めて力となります。

運動能力は、1人1人違いますから、周りのお子さんと比べずに、そのお子さん単独で考えた時、スモールステップで、でも一段一段確実に登っていくことができれば、それが早道なんだと、理解してあげることです。

今、こどもたちは、なぜ、自分は周りの友達のように動けないんだろう?なぜ、周りの期待に応えられないんだろう?ということに、一番困っているのかもしれませんね。

 

おこさんへの運動のサポートを、一緒に楽しくできたなら、少しの変化も見逃さずにキャッチでき、共に喜んであげることができるでしょう。それは、おこさんの成長を噛み締める喜びとなり、ご両親自身の達成感や充実感にもなることと思います。

 

仕事で疲れていても、そんなおこさんとの時間を持つことができたことは、あとで振り返得られた時、きっとご両親の財産となっていることと思います。

 

そして、そんなご両親の背中を見て、おこさんもまた、頑張った自分に自信と誇りを持ち、精神的にも大きく成長されるのではないでしょうか。