きらめき 綴り

療育アドバイザーとして活動しています。日々の心の煌めきを大切にしています。

美しい心。

チーム対抗の運動ゲームをしていた時のことです。

 

AチームとBチームに分かれて、等間隔に置かれたコーンの間を、大玉を転がしてジグザグ進むリレーをすることになりました。

チーム対抗。

リレー。

というと、必ず勝ち負けが起こります。

ところがみんなは負けるのが大嫌い。必ず誰かはキーッと怒ったり、シクシク泣いちゃう子が出てきます。

だからといって、「みんなでゴール」や、「みんな平等」というような勝ち負けを無くすということはしません。

勝ち負けって悪いことじゃないんだよ。

勝ったり負けたりがあるから、面白いし、負けると悔しいからまた今度はがんばるぞ!って燃えて楽しいんだよ。

もし負けちゃったら、「わぁ、ざんね~ん!」って言ってみよう。

と、予め説明してから挑みます。

 

そして、勝敗はスピードだけではありません。ゲーム中の行動、マナーも大切です。

順番を待つ。

ルールを守る。

友だちを応援する。

チーム全員が終わればサッと並んで座る。

勝っても、負けたチームが嫌な気分になることは言わない。

負けても、怒らない。「今度こそ!」「勝ったチームおめでとう」ってできるといいね。

というような態度でゲームに挑めたチームは、マナーでの勝ちになります。

「わかりましたか?」

「は~い!わかりました!」

と、一旦みんなから合意が得られました。

この、合意は大切です。

 

さあ、両チーム共に、SSTとして走る順番を自分たちで相談して決めてもらいました。

一番がいい!アンカーはボク!と意見を出しあいながら、譲れるところは譲って、かち合えばじゃんけんしています。良い感じです。

これまで幾度となく、チーム戦をしてきました。リーダーを作り体験してもらうことで、逆の視点からチームを見てもらいます。話を聞いてくれないって、こんなに大変なんだ・・・と実感すると、こんどチームの一員に戻ったとき、メンバーに協力することができるようになります。その経験を積んできた子たちは、今回も中心となって下級生たちをフォローしています。

準備が整ったところで、始まりますよ。

「よ~い、ドン!」

くねくね、ジグザグ、大玉は速すぎたら扱いづらいよ。

自分たちのチームを応援しつつも、大きく離脱して走っていってしまう子はいません。いい感じです。

最後の子たちがゴールしました。

急いでメンバーに声をかけて座っています。

おっと、一人立ってしまった子がいますよ?

反対側の子が興奮して叫んでいます。

「さあ、これは、どうなの~?マナーは大丈夫かな~?」と呼びかけて、そのお二人に我にかえってもらいました。

ゲームの勝敗は、速さとマナーで勝ち負けが分かれたことが発表されました。

速さで勝ってもマナーで負けたことに怒る子は、今回はいません。ここで、一人の子の行動が目に入りました。

どうも、マナーで勝ったけど、速さでは負けたチームの子が、勝ったチームに向かって拍手しているようです。

「それって、おめでとうってこと?」

「うん♪」

初めの説明を聞いて、早速実践してくれたんやね✨ この子は怒りっぽいところがあるけれど、こういう時はとても素直に相手を認めてあげることのできる子です。うれしいです。ほんわか胸が温かくなります。

ここで、もう一回戦。さっきのゴールのところで声かけされたことを今度は気をつけてやってみよう。と、スタートしようとしたとき、さっきは気後れがして不参加を表明していたお子さんが参加する気になってやってきました。

足が不安定で、少し自信がない子です。思ったようには動けないので、速さを競う競技は気後れします。だけどボールは大好き。

この子のチームは急いで迎え入れる為に順番を考えています。

「2番がいいんじゃない?またその後フォローしてあげられるし」

先ほど叫んだ女の子が提案しました。

「そうだね!」

チームの合意が得られました。反対側のチームは一人人数が足りなくなるので誰か二回走る子を決めています。

それでは二回戦!「スタート~!」

さっきの足元が心配な子は、私と一緒にえっさ、ほいさ。なんとか次にバトンタッチ。

結果はどうしてもそのチームが負けてしまいますが、態度は素晴らしくよかったです。よって、速さは負けたけど、マナーではこちらの勝ちとなりました。誰も異存はないようです。

 

ここで・・・。一人の男の子がさりげなく私に近寄りながら何か言っています。

「なぁに?」

「ぼ、ぼくさぁ~・・・、○○ちゃんにスピード合わせたんだよ」

「ん?どういうこと?」

「ぼくさぁ~・・・、さっき~、○○ちゃんが入ったから、自分が走る時は、スピード合わせて少しゆっくり走ったんだよね~・・・。」

「え?一緒の走る番だった?」

「ううん、一緒じゃなかったけど、○○ちゃんが入ったから、合わせておいたの」

うんうん、なるほど。二回走る役でもないし、同じ走る順でもなかったけれど、その子のことやその子のいる相手のチームのことを考えて、自分が走る時に少しゆっくり走ってくれたんだね。

誰からも頼まれていないのに、そんなところに気がついて、人知れず行動できる人。この子は時々感情の波に流されてしまうことがあるけれど、こういうことを笑顔でできる、本当に優しく美しい心の持ち主です。