梅雨空の下、私たちの気持ちをほんのり明るく照らしてくれた、紫陽花も、そろそろ終わりを迎えます。
そんな紫陽花について、こども達に知ってもらおうと、こんなお話をこどもたちとしてみました。
6月のある日。
私 :はーい、今は何月?
こども: 6がつ〜!
私 :ピンポ〜ン、6月やね〜。では、今、季節(正しくは季節現象)は何かな?
こども: はる〜!あき?なつかな?・・・?
私 :雨がよく降るねぇ。つ?
こども: あ!つゆ!
私 :ピンポ〜ン。
では、6月に咲く花は?
こども: さくら!
私 : ブー。紫陽花だよ〜。
こども:あじさいかあ。
こども:あじさい?
こども:あじさいって〜?
これは、活動の一場面です。この日は季節の花として、「紫陽花」の話をしています。
こども達の多くが、「紫陽花」を知らないことが多いです。
そんなこどもたちに、まずは、6月の花として、紫陽花という花があるんだよと共通認識ができるようにしている段階です。
私 :紫陽花は5月から7月にかけて咲く花です。見たことある人?
こども:は〜い!
こども:・・・。
こども:う〜ん・・・。
私 :(写真を見せる)これが紫陽花だよ〜。
こども:あ!見たことある〜!
こども:わたしも〜!
私 :紫陽花は、何色かな〜?
こども:むらさき!
こども:ピンク!
私 :そうやね〜、青紫や、ピンク・・・赤紫が多いね〜。紫陽花の花の色は、何で変わるか知ってるかな〜?
こども:はい!えさ!
こども:たいようのひかり!
こども:土のせいぶん!土のせいぶんでかわるらしいよ〜!
私 :あ!正解!よく知ってたね〜!土がアルカリ性なら赤、酸性なら青になるんだって。
こども:へ〜!!
こども:しってる〜!
私 :紫陽花にはガクアジサイと西洋紫陽花っていうのがあるんだよ。ところでこの 「ガク」ってどこか知ってる?
こども:う〜ん。えっと〜、くきのとこ!
こども:ねっこ!!
こども:はっぱじゃない?
私 :なるほどなるほど、みんなよく考えたねえ。では正解は〜〜・・・。みんなバラの花知ってる?バラの花びらの下の茎と繋がるところに緑の葉っぱみたいなところがあるでしょう?(と、薔薇の画像を見せる)この、花びらを守っているところがガクなんだよ。
こども:へ〜〜。
私 :このガクが花びらみたいに大きくなって、本当の花びらは、この真ん中にあって、小さいから目立たないんだよ。他に、何か紫陽花について知っている人、いるかな?
ここでは紫陽花の色、形、特徴、などについて話しています。
(この先は、こども等の中に物知りさんがいて、この日の本題である事柄について発言してくれることに期待)
こども:はい!あのう、あじさいには〜、毒があって〜、ある人があじさいのくきでたべものをさして、火でやいてたべて、なくなったってニュースで見ました!
私 :あ!さすが〇〇さん!よく知ってたね!。そう、紫陽花には毒があってね。最近は、植木鉢に植えられた紫陽花もお店でよく見られるようになって、家の中に置いているところあるかもね。それとか、パチンと枝を切って、花瓶に入れて飾ってる人もいるかもしれない。そんな時、枝の切ったところを触らないようにしてね。もし、汁が付いたら、口に入らないようにして手を洗ってね。気をつけるんだよ。
こども:わあ、怖いなあ。
私 :それとねえ、花には花言葉ってあってね。あじさいにもいくつかあるんだけど、その一つにね、「辛抱強さ」があるらしい。
こども:ふ〜ん。
私 :なんで紫陽花は辛抱強いって花言葉なんだろうね?
こども:・・・。う〜ん。なんでかなあ。
私 :みんなは雨が多い時はどんな風に過ごしているの?
こども:ゲームしてる!
こども:ほんよんでる。
こども:なんにもしてない。ゴロゴロ。
私 :それはどこで?
こども:いえのなかで〜!
私 :なんで家の中で?
こども:そとはあめがふっててぬれるから。
私 :雨に濡れたらなんで嫌なの?
こども:つめたいから。
こども:きもちわるいから。
こども:むしむししてるし!
私 :そうだねえ。雨に濡れたら冷たくて、気持ち悪くて、蒸し蒸ししてて、嫌だよね〜。ところで、みんなはそんな雨の中、紫陽花が咲いてるところを見たら、どんな感じがする?
こども:きれい♪
私 :雨が降ってると、外の様子はどう?
こども:くらいよ。
私 :そうだよね、暗いよね。そこに紫陽花が咲いてたらどう?
こども:うれしい!
私 :なんで?
こども:なんかぁ、楽しくなる。
私 :暗い所に赤紫や青紫の紫陽花が咲いていたら、どんな風に見える?
こども:そこだけ明るくなる!
私 :ありがとう。じゃあ、みんなはそんな暗いところで咲いている紫陽花を、どう思う?
こども:つよいなあ。
私 :うん。強いなぁと感じるんだね。梅雨は毎日雨が続いたり、ジメジメ蒸し蒸ししたりして、嫌だよねえ。外で遊べないから、家の中で遊ぶしかないし。外も暗い。気持ちもどんよりだよね。そんなみんながどんよりして嫌な雨の中で、紫陽花は、しとしと降る雨に打たれながらもひっそりと、でも赤紫や青紫の大きな花をたくさん咲かせてる。空が暗くても、そこだけポワンと明るくしてくれる。見てるこちらの暗い気持ちまで、なんだか明るくしてくれる。昔の人は、そんな紫陽花を見て、「辛抱強いなあ」と思ったのかもしれないね〜。
紫陽花にはいくつも花言葉があります。この日は、「辛抱強い」を取り入れて、みんなでどうしてそんな花言葉になったのか、考える時間を設けました。
こどもたちの療育で、私が大切だと考えていることの一つに概念形成があります。
こども達が、他者と卓球のラリーのようなスムーズな会話をすることが苦手な要因の1つに、語彙の少なさと、概念形成の遅れが挙げられます。
ラリーのような会話でなくても、他者から話しかけられたことを理解する、それにあった返事を返す、ということも、語彙が少ないと上手くできません。
でも、「語彙をふやす」というのは、私たちにとっても課題です。お仕事柄、語彙を増やす必要に駆られている方もいらっしゃることでしょう。ましてや、学習しだしたところのこども達ですから、知らないことの方が多いです。
学校で日常生活に困らないだけの言葉の量を学習し、身に付けるのを待っていたら、それまでの期間は会話がままならない、ということになってしまいますから、このようにして、日常の中で、対話しながら、少しづつ、ひとつづつ、丁寧に伝えていく方が、案外早く、そして深く、物事への理解を進めることに繋がります。
語彙の多さと、概念形成には、密接な関係性があると思っています。
たった一輪の花であっても、花の部位の名称、役割、色、香り、手触り、種類、開花時期、など、知らなくては、他者との会話に出てきたときに、その会話に入ることができません。道端で見たことを、家に帰ってからお母さんに話そうと思っても、説明することができません。
大きい、小さい、長い、短い、といった物を形容する言葉なども、授業で習っただけでは、実際の場面で使うことができないのです。
身の回りにあるものを使って、お子さんの目線、理解に合わせて、噛み砕いて話してあげることで、おこさんの概念形成も進み、覚えた言葉と合わさって、スムーズな他者との会話ができるようになります。
この、紫陽花の花について、こどもたちと対話形式で話している時には、一人の物知り博士が重要なキーパーソンになっています。どこの集団にも、一人はそんなお子さんがいるものです。
その物知り博士が、ポツリと呟いた、貴重な情報などは、しっかりと拾い上げて、そこから話を膨らましたいところです。
今回、私は、最近ニュースでも聞かれている、「紫陽花の毒」についてこどもたちに周知し、万が一の事故を防ぎたいな・・・という目的も合わせて持っていました。
頻繁な品種改良を経て、紫陽花はぐんと身近な植物へと進化しています。家庭の中にも入り込む機会がこれからも増えていくでしょう。
親御さんが、この紫陽花の毒について、ご存知でしたらおそらくお子さんへもお知らせになるでしょうから安心ですが、そうでなかった場合、ひょうんなことからお子さんが触れ、口に入るかわかりません。
じかに接することのできるこども達には、このリアルタイムで知ってもらいたい、自分で自分の身を守り、はたまた、友達にも注意喚起ができたらいいな、と思っていました。
最近のこども達は、よくニュースを見ています。今回の物知り博士も、ちゃんと「ニュースで見た!」と教えてくれていますね。こども達の中から出てきた言葉を使って、話が出来たら、一方的に大人が説明しただけよりも、他のこども達の興味、関心も格段に上がり、記憶に残ります。
紫陽花についても、同時に印象が深くなるし、自分でも考えて答えを出そうとする力も養うことができて、一石二鳥ならぬ、一石三鳥?です。
こども達と対話するときは、その日はどんな物知り博士がいるか、事前に把握しておくと良いですね。
ご家庭でも、ちょっとした空き時間に、ぜひおこさんと対話してみてください。授業で習うだけでは身につかない力を、おこさんにつけてあげることができますよ。
ちなみに・・・。この日、周りの大人(指導員)で、紫陽花の毒について知っている人は他にいませんでした。
大人も負けてはいられませんね😊