きらめき 綴り

療育アドバイザーとして活動しています。日々の心の煌めきを大切にしています。

きらめき療育論:重度自閉症児を持つ母たちの、深い悲しみと懐の深さ。

我が子が外で、わざとではないのだけれど他のお子さんに叩かれたり蹴られたりしたと家に帰ってきて言った時、「憤りを感じない」というお母さんはいらっしゃいますか?

 

「全く腹が立たない」

「どうでもいい」

という方、いらっしゃいますか?

 

中には、我が子がそんな場面に遭遇したことで、母である「自分のプライド」が傷つけられた、として烈火の如くお怒りになる人もいらっしゃいますが•••••。

恐らく多くのお母さんたちは、我が子が遭遇した出来事に、

「どんなに痛かっただろう」

「びっくりしたかもしれないな」

「つらかったね」

「悔しかっただろうな」

と、その時の子供の気持ちに寄り添い、受けた処遇に心を痛められるのではないでしょうか?

 

その後の対応として、

親として代弁してやらなくては、

とか、

同じことをまたされない為に、きちんと対処しておこう、

相手の親や、学校などその出来事が起こった場所の関係者に謝ってもらわなくては!

 

など、どのような行動をされるかは人それぞれですが、何か行動に移される方が圧倒的に多いことと思います。

 

では、我が子がそういう場面に遭遇し、何らかの被害を受けたということを学校や、お通いの習い事、若しくは児童発達支援事業所や放課後等デイサービス、友達のお母さんなどからご連絡を受けた時はどうでしょうか?

 

まずは冒頭の様な居たたまれない、なんとも言えない悲しい気持ちになられますよね。

その後、少なからずとも怒りというものは湧くのではないかと思います。

 

私は、学校や学童、そして療育施設で働いてきた中で、そういった、どうしても避けられなかった出来事というものを見てきました。

学校や学童では特に被害を受けてしまった側の保護者の多くは、激しい怒り、静かな怒り、そのどちらにしても、まずは厳しい雰囲気というものを発せられることが多いと思います。

時には深刻な問題として、話し合いがなされることもあるでしょう。

更には、そんな出来事を防ぐことができなかったことについて、痛烈なご指摘がなされることも多いと思います。

 

それだけ我が子を大事に想い、守ってやらなくてはという親の気持ちは強いということの現れなのでしょう。

そしてその気持ちは、子を持つ親なら誰しもが持つ感情なのではないでしょうか。

 

そんな中で、同じような報告を受けたとしても、少し違う反応を返される親御さんがおられます。

それはどんな方々かというと、

重度の知的障がいを併せ持っておられる自閉症児の親御さんたちです。

 

自閉症は現在自閉スペクトラム症と呼ばれ、その症状は人によって千差万別で、広汎性発達障害アスペルガー症候群高機能自閉症などと以前は分類されていましたが、判定が複雑で難しいことなどから、連続体としてのスペクトラム症と呼ばれるようになりました。

連続体の中には、支援の必要度の高い方を頂点として、徐々に低いと思われる方々へと裾野は広がっていくという考え方なのですが、その中でも、強く支援を必要とされるお子さんをお持ちの親御さんほど、周りの親御さんたちとは違った反応を返されるのです。

 

それはどんな反応かというと、

「お互い様なので」

という冷静で、穏やかで、謙虚な反応です。

 

一番に支援が必要なお子さんに対して、例えわざとではないにしろ、何らかの危害が加わったとしたら、本当なら烈火の如くお怒りになってもおかしくはないその場面で、この重度の知的障がいを伴う自閉症のお子さんの親御さんは、どうして冷静で、穏やかで、謙虚な反応を返されるのでしょうか。

 

発語がなく、起こった出来事を理解することが難しいだろうと思うから、でしょうか?

それは全く違います。

では、親として心が傷まず平気だということでしょうか?

それも、全く違います。

 

ではなぜ?

 

それは、、、

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