きらめき 綴り

療育アドバイザーとして活動しています。日々の心の煌めきを大切にしています。

ただほど高いものはない。

一昨日、私の初めての職業について触れた記事を書きました。

学校を卒業し、大きな商業施設で働くことになったのですが、それは特に接客業がしたいと夢があったわけではなく、人と接するのが好きだったわけでもありませんでした。

ただ単に、母が接客業だったから。

母が、接客業は楽しい、とよく私に話していたから。ただ、それだけでした。

どちらかと言うと人見知りで(といっても信じてもらえない)、引っ込み思案。石橋を叩いて叩いて結局渡らない、そんなタイプだったからか、所謂、親が引いたレールの上を素直に走っただけなのだと思います。

そんな私が、よくそんな大きな商業施設に就職したなと思うのですが、そういう「流れ」だったんだろうなぁと思うのです。

 

人見知りなのに、多くのお客様に話かけないといけないし、売り場には年配の販売員さんも大勢おられて、私にはハードルの高い仕事でしたが、石の上にも三年、、、とがんばっている内に、10年近くも経ってしまいました。

そんな私が、自分にとってミスマッチな職場で、10年近く続けてこれたのは、ひたすら「修行だ、修行だ」と自分に言い聞かせてきたからだと思います。

変なところでポジティブなのか、「この仕事を辞めたら、もう私はこれだけ多くの人に関わる仕事に就くことはできないだろうな」と、辞めようかと思ってもそんな想いが必ず頭をもたげてきました。

裏返せば、それがその仕事の魅力だったのかもしれません。

 

初めての仕事では、右も左も分かっておらず、失敗も多々ありましたが、今でも、私にとっての初めての就職が、こういった大きな会社で良かったな、と今でも思うことがあります。

 

それは何かというと、やはり教育です。

挨拶、お辞儀の角度、話し方、立ち居振る舞い等、接遇マナーもそうですし、大所帯なので、年功序列のピラミッド型の先輩後輩の関係も学べました。社会の厳しさもそうかもしれません。

どれもその後の私にとって、身を助ける教育だったなと思うのですが、特にそう何度も実感する教えが1つありました。

 

それは、初めて社会に出た若者が、自社の社員として働くために、大阪の大きなターミナル駅を通って通勤することで、様々なトラブルに巻き込まれないように守る為、一番初期に新人教育として行われた研修で、

マルチ商法ねずみ講対策」でした。

 

大阪は大きな繁華街なので、日が明るい内から、改札口を降りたところで、一目でそれと分かる派手なスーツを来たお兄さんが、これまたすぐそこなのに、「〇〇って、どう行ったらいいか知ってるぅ〜?」と聞いてきます。すり抜けてもすり抜けても、また別のお兄さんが声をかけてくるのです。

 

そういったお兄さん方から、声をかけられても、「一切返事はしてはいけない」というのが一番大切なことだと教えられました。

このお兄さん方、執拗に声をかけてくるので、つい根負けして質問に対して「はい」とか「いいえ」とか、返しただけでも、隙あり!とその後もズイズイと話しかけ、自分たちの話術で思い通りに事を運ぼうとするのが手法です。

だから、良い人を捨てきれず、ついうっかり「すいません、急いでいるので」といった断り文句であっても、返さない方が身の為です。

1度隙につけこまれたら、「ちょっとそこのビルでお話聞いてもらうだけやから、5分で終わるから、少しだけお願い」とか、「美容師してるねんけど、今、アンケート取ってて、すぐそこに車停めてるねん。女の子の美容師もそこで待ってて大丈夫やから、簡単なアンケートなので、少しお願い」などといって、しつこく絡んでくるのです。

その後は断りきれなくなって、すぐ帰れば良いんだし、と苦し紛れに「じゃあ少しだけなら」、、、と、承諾せざるをえなくなり、結局、高額な商品を買わされた、とか、車で暴力振るわれたといった事件に巻き込まれてしまうのです。

 

だから、「一切返事はしない」。「目も合わさず完全無視で通り過ぎる」ように、と、念を押されたのを覚えています。

 

それと、めったに会わない古い友達などから急に誘われて会いにいったら、ねずみ講の勧誘だった、なんてことも当時は多発していて、とにかく、相手がいくら友達だったとしても、いくら商品が魅力的に見えだしても、人を次々勧誘するだけで、自分にお金が入るといった、「上手い話には、絶対のってはいけません!」と、教えられました。

 

『おいしい儲け話には必ず落とし穴がある。』

『お金は汗水垂らして稼ぐもの。』

と、この時の研修で教えられた内容は、その後も私の頭の中に何十年も刻み込まれていて、駅で度々勧誘を受けた時も、友達から誘われたらねずみ講の勧誘で、何時間も喫茶店に軟禁状態にされた時も、最後まで教えを守り、結局一度もマルチ商法ねずみ講の被害にあうことなく、過ごしてくることができました。

当時、私はどこの会社でも、こういった研修を社員に受けさせていると思っていたのですが、別の会社に就職した友達などと、歩いていると、怪しい勧誘のお兄さんに声をかけられたら、すぐに愛想良く返事してしまうなんてことが多くあり、驚いて友達に訪ねてみると、そんな研修は受けておらず、知らなかった、と、返事がいつも返ってきました。

 

同じ会社の同僚であっても、研修内容をすっかり忘れて、ほいほい返事してついていって被害にあってしまう子も結構いたりして、なんだかやり切れないな、っていう気持ちをよく持ったものです。

 

私はこうして、会社から教えてもらうことができて、本当に良かったなと、今でも時々実感することがあります。

人からの勧誘にすごく警戒している内に、なんとなく相手の話す言葉の中に、マルチやねずみ講や詐欺特有のワードや話術があることが分かるようになったからです。

その人の表情や、声のトーンも、注意深く見たり聞いたりしていれば、怪しい陰に気づくことができます。

 

ただ、それを知らない人に説明しても、なかなか分かってもらえないのがもどかしいところです。

 

人を騙そうという人たちは、皆、満面の笑顔をしています。

初めはとても優しげで、とっつきやすくてフレンドリーです。

それはこちらの警戒を解かなければならないからで、どんなに自分たちはあなたの味方で、心配なんていらないんだよ的なメッセージを全面に送ってきます。

 

徐々に、今、あなたがいつも見聞きしている世界が実は間違っていて、自分たちが本当の世界を知っているから、それを教えてあげるといった話に入ります。

時には世界的な権威を引っ張り出して説明したり、データを見せたり、動画を見せたり。いかにももっともらしくこちらの常識を崩そうと揺さぶってきます。

そして、私たちが、今まで信じていたものに対して自信を失い、心細くなったところで、おいしい話を持ちかけます。

 

『今なら』『今だけ』『今しか』『先着〇〇名』『無料で』という言葉で、こちらを焦らせます。この時、無意識に相手の声のトーンは下り、抑えつけるような話し方になります。

 

最近は特に、この『無料』という誘い文句が多くなりました。

無料相談、無料説明会、初回無料。

 

どれも、初めの誘い文句としては魅力的な言葉です。この魅力的な言葉で、「少しだけ」と私達がやってくるのを、良い人の仮面を被って待っています。

 

罠にかかれば思うツボ。無料は初めだけ。あとは高額な費用がかかる話が待っています。

 

どんなに『効果的』『絶対儲かる』と繰り返されても、これに乗ってはいけません。

この頃は相手も賢くなり、『絶対とは約束できない』と、あたかもこれまでの詐欺とは違うよ? 効果は保証できないよ?と親切に詳しく説明してる風を装う強者も出てきています。

今はネットビジネスも増え、投資や仮想通貨といったものに接することも多い世の中。

〈お金を稼ぐ〉方法が実感を伴わないものになりつつあり、何が正しくて何が間違いかが分かりにくくなりました。

 

迷ったら、必ず立ち止まり、一旦引いてください。

誰か周りのタイプの違う人たちに聞いてみてください。

落ち着いて考えれば、きっとおかしなことに気づきます。

周りの評価を聞いてからでも遅くはないですよ。

 

これだけは覚えていてください。

 

相手は必ず、満面の笑みで来ます。

巧みな話術で魅力的です。

楽しい話でつい油断してしまいます。

 

しっかり、相手の言葉の裏を聞いて、自分の頭で考えてくださいね(考えないことを勧める人は怪しいです)

そして、これからを担う、若い人たち、子どもたちが被害にあわないように、日頃から、教えてあげて守って下さい。

 

 

今も昔も、

『ただほど高いものはない』ですよ。