きらめき 綴り

療育アドバイザーとして活動しています。日々の心の煌めきを大切にしています。

種をまく。〜発達支援の現場で〜

新年度が始まってから、もうすぐ3ケ月が過ぎようとしています。

幼稚園から小学校に上がったばかりの子どもたちも、すこし新しい生活に慣れてきたころでしょうか?

4月。

今年、指導者に加わった運動の教室の子どもの部で、私はこの小学校に上がったばかりの子どもたちや、まだ小さい園児たち、そして、まだ発語のない子どもたちも模倣しやすく、ダンスが嫌いでも、何度も聞いている内に勝手に体が覚えて動き出してしまうような、楽しいものを見つけて、新しくメニューに加えさせてもらいました。

そこでは、元々長年取り組んでいるダンスがあって、今や、大人のクラスに移った人たちは、子どもの頃から踊っている、そのダンスを、見事に完全に覚えてしまい、音楽がなると自動的に体が動き、上手に踊っておられます。

自閉症の方たちは、「繰り返し」行ってパターンになってしまうと、しっかり覚えて楽しめるのが強みです。

多くのそんな方たちをみていると、継続は力なり。素晴らしいことやな、と心底感じています。

しかし、昨年末になって、長く同じダンスを踊っているので、そろそろ違うものがあってもいいなあ〜と創立者である先生が呟かれたのです。

そこで、まずは子どもの部から新ダンスにチャレンジしてみることにしたというわけです。

でも、発語もない、模倣もままならない子どもたちもいます。その子たちも覚えて踊れる分かりやすいもの。テンポが良いもの。でも幼すぎないもの。を考慮して、1つダンスを選びました。

ただ1つだけ懸念がありました。

それは、ちょっと男の子が好きそうなものだということ。(圧倒的に男の子が多いので、そういう選択に)

そして、5年生くらいの子どもたちが嫌がらないかな?ということでした。

何よりみんな、初めてのことが苦手です。

知らないダンス、

初めてのダンス、

初めは上手く踊れないダンス。

それだけで、ムカムカ来てしまいます。

でも、新しいものを取り入れる時、「節目」というものが良い方へと作用してくれることも多いです。

変えるなら新年度初っ端。「今日から新年度。ダンスも新しくなりまーす」と宣言すれば、学校生活の経験を積んでいる子どもたちの多くは、「そうなんだ」と切り替えることができます。

そして、体幹も弱い、体の各パーツを繋ぐ神経もまだ上手く連携できていない、そんな幼い子どもたちの為にも、初めから手順を踏んで、春から順に取り組んでもらえるようにしたい。

そういうことも考えながら、新しいダンスを開始しました。

すると、どうでしょう。

5月。

想定通り、2回目になり、高学年の女子たちがそっぽを向いています(笑)

意外と幼い子どもたちの方が切り替えが付きました。

一人の女の子が終わってからやって来ました。

「あの踊り嫌やねんけど。」

「そうなんや、嫌なん?どこが嫌?」

「ポーズが嫌」

「あ、ポーズが嫌なんや」

「そう!男っぽくて嫌。あの子も言ってる」と言ってもう1人の女の子を、指差しました。

どうしてそのポーズが嫌かというと、そのポーズをすると筋肉ムキムキになりそうやから嫌、とのことでした。

ポーズをとると、ムキムキになる、かといえばなりませんが、そう感じてしまうところに高学年といえど、イメージと現実の分離がまだ良くできていない部分を感じます。

でもきっと感じていることはそれだけではないのでしょう。

女の子としてそのポーズを取ることに躊躇いがある。

他者の目を気にして無邪気にできない。

という、高学年ならではの他者視点と自尊心が既に身についているという証拠でもあります。

「初めてのダンスだから戸惑うのもあるかな?」と、わざと聞いてみました。

「新しいからじゃない」

そう答えてくれました。

新しいからじゃない。自分たちには理由がある。

そう考えているようでした。

でもその裏に、やはり新しい曲、ダンス、ポーズに対して、自分たちの中に戸惑い、困惑、受け入れ難さがある、ということには自己理解としてまだキャッチはできていない様子でした。

『恥ずかしい』という気持ちも分かります。

うーん、、、と、しばし悩みましたが、率直に、どうしてこのダンスを選んだかについて説明しました。

そして、念の為、

筋肉自体は生きて行く為にとても大切な物。

でもダンスでポーズを取っただけでは筋肉モリモリにならないこと。

もし筋肉がついても洋服を着れば分からないこと。

試しに、先生は筋肉モリモリに見える?と聞いてみました。

「いや、見えん」と答えてくれました。

そうでしょう?とニヤリ。

「でもほら、腕触ってみて」と促します。

うわ、と目を丸くするその子。

「ね、心配しなくても、服を着てたらこれくらい分からないのよ。」

と話しました。

「それより、まだダンスが難しい年下の子たちの為に、お姉さんたち、お手本になれるように頑張ってもらいたいわ」と付け加えました。

う〜ん、と、分かったんだか分からなかったんだか分からないような顔をして、その日その女の子は帰っていきました。

次の回。前で踊る私の横でいつも一緒に踊ってくれている3〜4年生の女の子が、いませんでした。

前回の高学年のお姉さんたちに従って、反発しているようです。

「あらあら」と思っていましたら、その子が終わってからやって来て、お姉さんたちと同じことを私に告げました。

家でも、この子どもたちは、「新しいダンスが嫌だ。行きたくない」と口々に言っているようです。

きっとそうだろうなぁと思い、お母さん方に聞くと、そう仰っていました。

「お手数おかけしますね」と声をかけると、お母さんは、「いえいえ、いつものことですから」とやんわり返してくださいます。

3回目もその3〜4年生のお子さんはダンスで横に来ませんでした。

帰り際にそのお子さんに私はこっそりお話しました。

「あのね、いつも横で踊ってくれててありがとう。先生とても助かってるんだよ。それでね、新しいダンスのことなんだけど、あれはね、まだ難しいダンスができない友達でも踊れるようなものにしてるんだよね。で、みんなが上手に踊れるようになったら、また次の新しいダンスに移れると思うんだよ。それにはさ、前で上手に踊れるお手本になれる人が多い方がいいんだよ。集団で踊ってると、つられて踊りたくなっちゃうからね。だから、〇〇ちゃんも早くマスターして、前でお手本として踊ってくれた方が、早く次のダンスに行けるってわけ」

そこまで聞いたその女の子の目がパッと輝きました。

「一石二鳥ってことね!☆」と。

「そうそう、一石二鳥よ(笑)」と意気投合し、暫くそこから四文字熟語で盛り上がりました。

お母さんが心配そうにやってきて、「すいません、ごねてませんか?」と気にかけています。

「いえ、今ね、種まきしてたんですよ。きっと次回大丈夫です。ご安心を」

そう言うと、不思議そうな表情をされながらも納得し、帰っていかれました。

6月。

さて、4回目です。

例のダンスの曲が鳴り出しました。

ふと横を見ると、前回の一石二鳥のお子さんが、横で私の振りをちょこちょこ見ながら頑張って踊っています!

なかなか筋が良いお子さんで、すでに上手です。

終わって、そのお子さんに声をかけました。

「ありがとう!すでに上手だったよ!助かるわ」と。

そのお子さんは、弾けるような笑顔で

「あんな感じでいい?」と聞きました。

「充分よ♡これからも、もし先生がいない時でもよろしくね!」

と託したところ、

「はい!よ〜し♪ルンルルンルン」と、前まであんなに嫌だといっていたダンスの曲を口ずさみ、踊りだしました。

そこへお母さんがやって来て驚いています。

「なんや!ハマってるやん(笑)」と。

そこで前回の種明かし。なんて声かけをしていたかお母さんにお話をし、「ちゃんと彼女はそれに応えてくれています。」と説明しました。

 

発達支援のプロ、と聞くと、多くの人がイメージするのが、「どんな場面でも瞬時に対応し、その場で解決できる」という姿ではないかなと思います。

でも実際には、その場で即対応できることというのは、さほど難しい内容ではない場合が多いです。調整領域が軽い場合と言えます。

•問題が浅い

•条件が揃っている

•もともと回復力がある

というようなケースですね。

それ以外の、複雑な構造の場合は、段階を得ながら見立てを行い、解決する為に必要な順番はどこなのかを見極めながら手を打っていく必要があり、それには相手の言動にこちらを合わせながら行動を精査する必要が出てきます。

ここでは、個人的な関わりだけではなく、様々なタイプの方が大勢集まる場合で、しかも運動を行う動きのある場ということから、どこから対処し、時間を追うごとにその効果が発生していき波及していくか、を想定して動くことが必要となる場面でした。

(実際はこの様な問題が多層的に積み上がっていることが多く、私が扱っているケースは圧倒的に複雑系が多いです。)

まず初めに、横で踊ってくれるお子さんに働きかけ、それによって、そのお子さんが自主的に役割を担おうと気持ちを変化させ、行動を変えてくれること、を見越して動いたのは、その後の行動を期待して行った

「種蒔き」のようなものです。

最初に種蒔きしたことによって、この3〜4年生のお子さんが芽吹き変化し、それによって、今後、それを見た高学年のお子さんたちの気持ちが変化していってくれることを期待しています。今まで自分たちの意見に賛同していたお子さんが、柔軟に新しいダンスを受け入れ、1つ大人になって前で踊っている。それをみた高学年の子どもたちの心にどんな気持ちが芽生えるか。それを期待しているのです。

大人になるほど、対応力が上がりますが、逆に拘りが強くなることもあります。

屈託が無い、幼い頃の方が、声かけがピッタリ合えば、すんなり行動を変えられることも多いのです。

今回はそこに狙いを定めて、種まきをしたというわけです。

 

更にもう一つ、種蒔きしていることがあります。

それは、発語をまだ獲得していない、模倣も難しいお子さんたちへの種蒔きです。

そちらもね、だんだん、芽が出てきているようですよ🌱

 

それについては又、次回に。

 

発達支援の現場で行う種蒔きのお話でした✨